外気温の低下により心筋梗塞リスクが増大

提供元:ケアネット

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公開日:2010/08/27

 



心筋梗塞のリスクは外気温が低下するごとに増大するが、外気温が高いこととは関連がないことが、イギリス・ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のKrishnan Bhaskaran氏らがMyocardial Ischaemia National Audit Project(MINAP)のレジストリーについて実施した解析で明らかとなった。外気温は短期的な死亡率増加のリスクに影響を及ぼし、暑い日も寒い日にも死亡率は増大することが示されている。一方、外気温が心筋梗塞のリスクに及ぼす影響については明らかにされていないという。BMJ誌2010年8月14日号(オンライン版2010年8月10日号)掲載の報告。

外気温の1℃の変化ごとの心筋梗塞リスクの変動を評価




研究グループは、イングランドとウェールズの15の大都市圏において外気温と心筋梗塞のリスクの短期的な関連について検討するために、時系列的な回帰分析を行った。

対象は、2003~2006年のMyocardial Ischaemia National Audit Projectに登録された心筋梗塞入院患者8万4,010例で、イベント発生数中央値は57件/日であった。外気温の1℃の変化ごとの心筋梗塞リスクの変動を、その後28日にわたり検討した。

心筋梗塞のリスクが高い集団への介入で、外気温低下によるリスク増大を抑制可能




外気温と心筋梗塞の発症には、平滑化されたグラフとして直線的な関連が認められ、外気温の閾値とは無関係に対数線形モデルによって良好な相関関係が確認された。すなわち、1日の平均外気温が1℃低下するごとに、直近およびその後28日間の心筋梗塞リスクが2.0%(95%信頼区間:1.1~2.9%)ずつ累積的に増大した。

最も強い影響は2~7日と8~14日の中間期に生じると予測され、外気温1℃の低下ごとに心筋梗塞リスクがそれぞれ0.6%(95%信頼区間:0.2~1.1%)、0.7%(同:0.3~1.1%)増加した。外気温が高いことは心筋梗塞に対し有害ではなかった。

75~84歳の高齢者は85歳以上を含む他の年齢層よりも外気温の1℃低下による心筋梗塞の相対リスクが有意に高く(相互作用のp<0.001)、冠動脈心疾患の既往歴のある患者は既往歴のない患者に比べ相対リスクが有意に高かった(相互作用のp=0.001)。これに対し、アスピリン服用者は、非服用者に比べ心筋梗塞の相対リスクが有意に低かった(相互作用のp=0.007)。

著者は、「外気温の低下による心筋梗塞のリスク増大は、寒さに関連した死亡率増加の促進因子の一つと考えられるが、外気温が高いことは心筋梗塞のリスクを増大させない」と結論し、「外気温低下の予報をきっかけとして、的を絞ったアドバイスを行うなどの介入法によって、心筋梗塞のリスクが高い集団におけるリスク低減が可能となるだろう」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)