20年間で世界の子どもの死亡数は減少したか?:MDG4達成に向けて

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2010/06/17

 



世界の5歳未満の子どもの死亡数は1990~2010年の20年間で420万人減少し、低所得国を含む13地域では低下速度が加速化していることが、アメリカWashington大学のJulie Knoll Rajaratnam氏らによるミレニアム目標4(MDG4、2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する)の進捗状況の調査から明らかとなった。MDG4の目標達成期限まであと5年しか残されていない。以前の調査では、MDG4達成の軌道上にある国は4分の1以下であることが示され、2000年以降になされた施策構想や投資の観点からは、MDG4達成に向けた進展に増強傾向が認められるか否かの見極めが重要なことが示唆されているという。Lancet誌2010年6月5日号(オンライン版2010年5月24日号)掲載の報告。

1970~2010年における187ヵ国の5歳未満の子どもの死亡について検討




研究グループは、1970~2010年における187ヵ国の5歳未満の子どもの死亡数について検討した。健康状態登録システム、国勢調査の略式出産記録、完全出産記録などの情報源のデータをすべて用いて死亡に関する1万6,174の測定値のデータベースを構築した。

ガウス過程回帰モデルを用いて出生から5歳までの死亡の推定値を算出した。本試験は、子どもの死亡の推定にガウス過程回帰モデルを使用した初めての研究であり、この手法は従来の方法に比べサンプル外の予測の妥当性が良好で、データのタイプの違いに起因するサンプリングおよび非サンプリングエラーによって生じる不確かさを把握できる。

健康状態登録システムと、新生児(生後1ヵ月未満)および0歳児(生後1ヵ月~1歳の誕生日の前日まで)の死亡に関する情報を含む完全出産記録に基づく1,760の測定値を使用して得た5歳未満の子どもの死亡数から、新生児、0歳児、1~4歳児の死亡数を推定した。

子どもの死亡率の迅速な低減は、世界の医療の継続的な優先課題




世界の5歳未満の子どもの死亡数は、1990年の1,190万人から2010年には770万人にまで低下した。2010年の内訳は、新生児の死亡数が310万人、0歳児は230万人、1~4歳児が230万人であった。

5歳未満の子どもの死亡の33.0%が南アジアで発生し、49.6%がサハラ砂漠以南のアフリカ諸国で発生していたが、高所得国は合わせても1%に満たなかった。

世界21地域で新生児、0歳児、1~4歳児の死亡率が低下していた。1990~2010年までの新生児死亡率の年次低下率は2.1%であり、0歳児死亡率の年次低下率は2.3%、1~4歳児の場合は2.2%であった。

サハラ砂漠以南のアフリカ諸国を含む世界13地域では、1990~2000年の10年間に比べて2000~2010年の方が死亡率の低下速度が加速化しているとのエビデンスが得られた。サハラ砂漠以南のアフリカ諸国のうち死亡率の低下率が1%以上であったのは13ヵ国(アンゴラ、ボツワナ、カメルーン、コンゴ、コンゴ民主共和国、ケニア、レソト、リベリア、ルワンダ、セネガル、シエラレオネ、スワジランド、ガンビア)であった。

著者は、「5歳未満の子どもの死亡のロバスト測定により、いくつかの低所得国では死亡率の低下速度が加速化していることが示された。これらの良好な進展は注目に値するものであり、施策への関心の高まりや医療資源の増強を求める声が大きくなる可能性がある」と結論し、「死亡率の改善が加速化している国のほとんどがMDG4を達成できないであろうが、国際的な共同体は医療資源や技術供与によってこれらの動向の助成に重要な役割を担いうると考えられる。子どもの死亡率を迅速に低減させることは、世界の医療の優先課題であり続けなければならない」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)