アリピプラゾールの聴覚認知機能改善に対する影響は?

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2013/01/28

 

 これまでに、認知障害は統合失調症の中心的な症状とみなされ、認知機能は症状レベルよりも機能性アウトカムの、より良好な予測因子であることは明らかであった。また、聴覚認知機能の早期異常には、ミスマッチ陰性電位(MMN)が関連することがわかっていた。中国・南京医科大学のZhenhe Zhou氏らは、これまで明らかになっていなかった統合失調症患者におけるMMNへのアリピプラゾールの効果について検討した。PLoS Oneオンライン版2013年1月号の掲載報告。

 対象は、統合失調症患者26例と対照群26例。ベースラインおよびアリピプラゾール治療開始後4週、8週時点における精神病理学的評価をPANSSを用いて行った。事象関連電位(ERP)の評価は、聴覚刺激100ミリ秒/1,000Hzを標準刺激とし、100ミリ秒/1,500Hzを頻度逸脱(frequency)刺激、250ミリ秒/1,000Hzを持続期間逸脱(duration)刺激として行われた。脳波(EGG)は正中前頭部(Fz)で記録し、データ解析にはBESA 5.1.8が用いられた。MMN波形の評価は、frequencyあるいはduration刺激波形から標準波形を減算し行われた。

 主な結果は以下のとおり。

・アリピプラゾール治療は、すべてのPANSSスコアを改善させた。
・ベースラインにおいて患者群は対照群よりも、frequencyおよびduration MMNの平均振幅が小さかった。
・セッション(ベースライン、4週、8週時点など)およびMMNタイプ(frequency対duration)を被験者内要因として行ったrepeated measure ANOVAの結果、MMN振幅に対するMMNタイプまたはMMNタイプ×セッション効果の有意性は示されなかった。一方で、セッション効果のみでは有意性が認められた。
・またLSD検定にて、8週時点とベースラインおよび4週時点とのMMN振幅の有意差を調べた。
・ベースラインおよび各評価時点において、frequencyおよびduration MMN振幅の変化とPANSS総スコアの変化との間に、有意な逆相関の関連が認められた。
・以上の結果から、アリピプラゾールはMMN振幅を改善する。またMMNは、アリピプラゾール治療が統合失調症における前注意障害(preattentive deficits)を改善するという客観的なエビデンスを提供する。

関連医療ニュース
統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か?
認知機能への影響は抗精神病薬間で差があるか?
PETでみるアリピプラゾール薬理作用「なぜ、EPSが少ないのか」

(ケアネット)