医療現場でのコミュニケーションの問題はインシデントの主因

提供元:HealthDay News

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公開日:2025/05/12

 

 医療現場でのコミュニケーションの問題は、患者の安全に関わるインシデント(以下、インシデント)の主因であることが、新たな研究で明らかになった。インシデントとは、ニアミスなど患者に実害がなかったものも実害があったものも含めた、標準的な医療から逸脱した行為や事態のことを指す。本研究では、コミュニケーションの問題のみを原因として生じたインシデントは13.2%に上ることが示されたという。英レスター大学医学部のJeremy Howick氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に4月15日掲載された。

 Howick氏らは、論文データベースからコミュニケーションの問題が患者の安全に与える影響を定量的に評価した46件の研究を抽出して結果を統合し、医療従事者間(臨床スタッフ間および臨床スタッフと非臨床スタッフ間)、または医療従事者と患者・介護者間のコミュニケーションの問題が患者の安全に与える影響を検討した。これらの研究には総計6万7,826人の患者が含まれていた。

 46件中4件の研究では、医療におけるコミュニケーションの問題がインシデントの唯一の原因として認められた割合を検討しており、その中央値は13.2%(四分位範囲6.1〜24.4%)だったことが示されていた。残る42件の研究では、コミュニケーションの問題がインシデントの一因であったかが、他の因子とともに検討されていた。それらの研究からは、中央値で24.0%(同12.0〜46.8%)のインシデントにコミュニケーションの問題が関与していることが明らかになった。

 ある症例では、医師がビープ音を発しているポンプを止めるところを誤って心臓病の薬の点滴を止めてしまっていた。医師が看護師にそのことを伝えなかったため、その後、患者に危険な頻脈が生じたという。別の症例では、手術後の患者に腹痛が生じ、内出血の兆候である赤血球数の減少が認められたにもかかわらず、看護師から外科医にそのことが伝達されなかったため、患者が死亡していた。研究グループは、患者の死因となったこの内出血は予防できた可能性があると述べている。

 Howick氏らは、「本研究結果は、医療従事者が同僚や患者などとの強い関係を築くために効果的なコミュニケーションスキルを身に付け維持することが、極めて重要であることを浮き彫りにしている」と述べている。

 さらにHowick氏らは、このようなコミュニケーションの問題が発生する理由や患者を守るための改善策を解明するには、さらなる研究が必要だとしている。同氏らは、「コミュニケーションスキルの向上を目指す医療従事者は、患者の安全向上を目的としたコミュニケーション介入に関する公開報告書を読むと参考になるだろう。これらの報告書では、医療従事者間、そして医療従事者と患者間の言語コミュニケーションに対する標準化された介入アプローチが紹介されている。しかし、このような介入をさらに最適化・発展させ、患者安全の向上に最も効果的な介入を特定するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。

[2025年4月15日/HealthDayNews]Copyright (c) 2025 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら