標準的な3T(静磁場強度が3テスラ)MRIの2倍以上の強さの磁場を発生させる7T MRIを用いることで、3T MRIでは検出できなかったてんかんの原因となる病変を検出できることが、新たな研究で明らかにされた。特に、パラレル送信システムを用いた7T MRI(pTx 7T MRI)は病変の描出に優れていたという。英ケンブリッジ大学生物医学画像分野教授のChristopher Rodgers氏らによるこの研究の詳細は、「Epilepsia」に3月20日掲載された。
MRIは、薬剤抵抗性てんかん患者の手術前評価において、脳の構造的病変の検出に重要な役割を果たしている。7Tてんかんタスクフォースの2021年のコンセンサスペーパーでは、薬剤抵抗性てんかん患者に対しては、7T MRIの使用が推奨されている。7T MRIは、従来の3T MRIよりも空間解像度と感度が優れており、3T MRIでは検出できないてんかんの構造的病変を検出できる。しかし、7T MRIには、側頭葉などの脳の重要な領域において信号ドロップアウト(信号が低下した領域が黒く映る)が発生するという欠点がある。
この欠点を補うためにRodgers氏らは、1つではなく8つの送信機を頭部周囲に配置するパラレル送信システムをMRIに実装した。その上で、3T MRIでは陰性または曖昧な結果しか得られなかった薬剤抵抗性てんかん患者31人を対象に、pTx 7T MRI画像と単一送信7T MRI(CP 7T MRI)画像を取得し、比較した。Rodgers氏は、「MRI装置は、かつては単一の無線送信機を使用していた。しかし、単一のWi-Fiルーターでは信号を受信しにくい領域が出てくるのと同様に、この方法ではMRI画像に関連組織を判別しにくい黒い点が残されがちだった」とケンブリッジ大学のニュースリリースで述べている。
その結果、7T MRIにより、9人(29%)において、これまで3T MRIでは確認できなかった病変が特定された。また、4人(13%)において、3T MRIで疑わしいとされていた病変が実際にてんかん発作の原因であることが、さらに4人(13%)においては、3T MRIで疑わしいとされていた病変が実際にはてんかん発作の原因ではないことが確認された。病変は、57%の症例でpTx 7T MRIにおいてCP 7T MRIよりも鮮明に可視化されていた。
7T MRIによる検査によりてんかん管理が変更された患者は18人(58%)に上った。うち9人では病変の除去手術が提案され、別の1人にはレーザー間質性熱療法が行われた。また3人では病変が極めて複雑であったため、手術が適応外とされた。さらに5人では、電極を使用して病変を正確に特定し、発作を管理する代替技術が提案された。
論文の上席著者であるケンブリッジ大学臨床神経科学分野のThomas Cope氏は、「抗てんかん薬が効かないてんかんは、患者の生活に大きな影響を及ぼし、自立や仕事の継続能力に影響を及ぼすことが多い」とニュースリリースの中で指摘する。さらに同氏は、「これらの患者の多くを治癒に導くことは可能だが、そのためには、脳のどこに発作の原因があるのかを正確に突き止めなければならない。7T MRIは、導入以来ここ数年でその有望性を示してきたが、今回のパラレル送信という新たな技術のおかげで、より多くのてんかん患者が人生を変える手術を受けられるようになるだろう」と述べている。
[2025年3月26日/HealthDayNews]Copyright (c) 2025 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら