30代で高血圧の人は70代になった時に脳の健康が悪化している?

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/05/09

 

 成人期の早い段階で高血圧を発症した人は、高齢期に入った時点で脳の健康状態が悪化している可能性のあることが報告された。特に男性においてその関連が強いという。米カリフォルニア大学デービス校のKristen George氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に4月3日掲載された。

 中高年者では高血圧を有することが、アルツハイマー病や認知症のリスクを示す頭部画像所見の多さと関連のあることが知られている。それに対して、中年期以前の高血圧と頭部画像所見との関連については知見が少ない。また、中年期以前に高血圧を発症した患者のうち女性患者は、女性ホルモンの保護作用によって脳の構造的な変化が男性よりも抑制される可能性がある。そこでGeorge氏らは、初期成人期の血圧と頭部画像所見との関連、およびその性差を検討した。

 解析対象は、1964年6月1日~1985年3月31日の間に2回以上健診を受診しており、2017年6月1日~2022年3月1日の間に頭部画像検査が行われていた427人。初回健診時の年齢が中央値28.9歳、初期成人期で最後の健診時は同40.3歳、頭部画像検査は同74.8歳で行われており、女性が61.6%を占めていた。全体の44.7%は初期成人期の血圧が正常域で推移、15.9%は途中で高血圧を発症、39.3%は初回の健診時点で高血圧だった。

 頭部画像検査の結果、初回の健診時点で高血圧だった人は、初期成人期に高血圧を発症しなかった人に比べて、大脳灰白質や前頭皮質、海馬などの体積が有意に小さいことが分かった。初期成人期の途中で高血圧を発症した人も、評価した脳局所体積の一部が小さいことが確認されたが、その程度は初回健診時で高血圧だった人より小さい傾向があった。

 性別に分けて検討すると、女性より男性で、初期成人期に高血圧であったことと強い関連が認められた。例えば大脳灰白質体積は、男性では初回の健診時点で高血圧だった人と途中で高血圧を発症した人の双方が、高血圧を発症しなかった人よりも小さかったのに対して、女性は双方ともに有意差が観察されなかった。研究者らは、「この違いは、女性の閉経前のエストロゲン分泌が脳に対して保護的に作用していることが関連しているのではないか」と述べている。

 本研究の結果を、論文の筆頭著者であるGeorge氏は、「認知症の治療手段はごく限られている。そのため、修正可能なリスク因子および保護的に作用する因子を明らかにし、人生の早い段階からそれらを標的とした介入を行うことが、高齢期に入ってからの疾病負担の軽減につながる。高血圧は極めて患者数の多い疾患であり、かつ修正可能なリスク因子の一つだ」と総括している。

 また論文の上席著者である同大学のRachel Whitmer氏も、「われわれの研究は、初期成人期にリスク因子が発生した場合に、それに対する生涯を通じた患者本人によるケアが重要であることを示している」と話している。なお、本研究の限界点として、頭部画像検査を高齢期以降のみに行っており、経時的な変化を評価できないことなどが挙げられるという。

[2023年4月12日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら