44歳で脳卒中発症後にヨガインストラクターとして復帰した女性―AHAニュース

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/04/11

 

 米国に住む韓国人女性、LeeAnn Waltonさんは当時、オフィスワークのほかに、ヨガのインストラクターをしていた。彼女のヨガクラスは大変な人気で、オフィスでの仕事が終わり次第、マンハッタンやその周辺のフィットネスクラブに駆けつけて指導するという毎日だった。

 その日もウォームアップに続いて、いつものように指導を始めた。部屋の中を歩きながら生徒のフォームを手直ししている時、突然、頭の中で輪ゴムを鳴らしたような音がした。「変だな」とは思ったが、特に異常は感じなかった。しかし数分後、右手が不自然にねじれて発語も不明瞭になり始め、ついにはバランスを崩して生徒の上に倒れこみ、嘔吐した。

 Waltonさんの次の記憶は2日後のことだ。集中治療室で目を覚ました。体にはさまざまな医療機器が取り付けられていた。彼女は体の右側をほとんど動かせなくなっていた。まるで誰かに右腕と右足に重いおもりを縛り付けられたように感じた。医師から、「あなたは脳卒中を起こした」と告げられた。医師の説明によると、原因は不明だが、脳の中で血管が破裂して出血が起き、その出血によって脳が圧迫されるのを抑えるための緊急手術を行ったとのことだった。

 しかし当時44歳だったWaltonさんは、そのような脳卒中が今後の自分にどのような影響を及ぼすのか、よく分からなかった。ただ、病室の外で医師たちが交わす会話が耳に入ることがあった。その中の1人が、「彼女はおそらく再び歩くことはできず、ヨガの指導は無理だろう」と話す声が聞こえた。その時、Waltonさんは心の中でつぶやいた。「よし。だったら見せてあげよう」。

 1週間後、彼女は急性期リハビリテーション施設に転送された。その時すでに、手すりを握り、一歩一歩止まりながら歩くことができるようになっていた。彼女が左利きであることは幸運だった。脳卒中前の記憶も、全部ではないが少しずつ戻ってきていた。

 リハビリ施設では毎日、理学療法と作業療法を受け、さらにセラピストと相談の上、自分自身の方法でのエクササイズも追加した。2週目には、杖を使って歩けるようになり、さらに10日後には右半身の筋力が回復して自宅退院した。退院の際、セラピストは、「あなたの前途は非常に困難なものかもしれないが、頑張って」と語った。

 一人暮らしだったWaltonさんは自分のペースで治療を続け、障害はゆっくりと改善していったが、加入している健康保険の関係で3カ月以内に復職する必要があった。会社側は彼女に配慮し、ラッシュアワーを避けて遅めに出社して、早めに退社することを許可した。それでも歩行速度が遅いために地下鉄内で人にぶつかって、ののしられたりした。帰宅すると、ベッドに倒れこむように横になった。ソファーの下に置いてあったヨガマットが目に入り、涙が止まらなくなった。

 脳卒中が起きてから約1年後、新型コロナウイルス感染症パンデミックが発生した。自宅勤務となり、彼女は落ち着いてリハビリを続けられるようになった。ただし、パンデミックに伴いアジア人に対する差別や暴力が増加したため、韓国人である彼女は恐怖を感じ、同じニューヨーク市内でもより多様なコミュニティーが形成されている地区に転居した。

 昨年の春、脳卒中後に何度か現れて、その都度、対症的な治療を受けていた右腕の震えが再発した。彼女は仕事を辞めてリハビリに専念することを決めた。集中的な歩行訓練を含む、新しい理学療法プログラムを受け、歩き方が正常に近づいたように感じた。彼女のセラピストは、シンプルで優しい動きのヨガを試してみるように助言。それを受けて、ヨガの簡単なフォームから、練習をするようになった。

 そして今年に入り、Waltonさんはついに、ヨガの基礎クラスのインストラクターとしての活動を再開した。「二度とこんなことができるとは思っていなかったので、今は感謝の気持ちで毎日泣いている」と彼女は話す。

 Waltonさんの親友の1人、Amber Harrisonさんは看護師だ。そのため、Waltonさんが脳卒中になった時、彼女がそれから直面するに違いない苦難の大きさを知っていた。しかし今、Harrisonさんは、「LeeAnnはファイターだ。脳卒中は彼女の人生の全てを変えたが、彼女はその後、完璧な奇跡をやってのけた」と語っている。

[2023年3月14日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
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