人工陰茎白膜の開発―ブタのペニスで有用性を確認

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/02/03

 

 人工的な陰茎白膜の開発状況に関する論文が「Matter」に1月4日掲載された。華南理工大学(中国)のXuetao Shi氏らによる研究であり、動物実験によって新しい技術の有用性が確認されたという。論文の上席著者であるShi氏は、「この領域の技術開発はあまり注目されていないが、潜在的なニーズは非常に大きいのではないか」と述べている。

 40~70歳の男性の約半数が何らかの勃起障害(ED)症状を抱えていると推定されており、その5%程度はペイロニー病が占めると考えられている。ペイロニー病は、陰茎の白膜という組織に瘢痕ができて痛みを生じたり、陰茎が湾曲する病気。発症の原因は、外傷や性行為中に生じるダメージが多いとされる。白膜は勃起時に海綿体にたまった血液の流出を遮る役割があるため、その白膜が損傷を受けるペイロニー病ではEDになりやすい。

 Shi氏らは、ポリビニルアルコールという合成樹脂を用いて人工的な白膜を作成し、ブタなどでの動物実験で有用性を検討した。その結果について同氏は、「基礎的な研究から、人工白膜の可能性をある程度は予想していた。しかし、損傷した白膜を人工白膜に置き換えた直後に、正常な勃起能を取り戻す可能性を示したことには驚いた」と語っている。

 研究ではまず、in vitro(生体外)研究として、食肉用に処理されたブタの陰茎を入手し4群に分類。3群は陰茎白膜の一部(8×8mm)を切除後に、そのうち1群は白膜を縫合修復し、他の1群は人工白膜で修復して、もう1群は修復を加えなかった。残りの1群は対照群とした。その後、海綿体に生理食塩水を注入したところ、修復なし群は勃起せず、縫合修復群は勃起が誘発されるものの陰茎が大きく湾曲してペイロニー病様の状態となった。それに対して人工白膜で修復した群は勃起が誘発され、かつ対照群と同様に、陰茎が自然な形状になることが確認された。

 次に、ラットやウサギの組織を用いて生体的合成を検討した結果、血栓形成や細胞毒性などが生じないことが確認された。また、in vivo(生体内)研究としてラットの背中に人工白膜を埋め込み、30日後、60日後に屠殺し炎症や線維化の有無を確認したが、その兆候は見られなかった。さらに6頭のブタを3群に分け、2群を前記と同様に白膜を切除して、その1群を縫合治療、他の1群は人工白膜で治療。30日後に屠殺し比較すると、縫合治療群は線維化と血腫、治癒不良の所見が認められた。それに対して人工白膜治療群の組織は、白膜を切除しなかった対照群と変わらず、生理食塩水注入による勃起の誘発も確認された。

 これらの研究結果を人で再現可能かを論じることは時期尚早だ。しかしShi氏は、「ペイロニー病モデルのブタに人工白膜を用いた手術を施行してから1カ月後に、完全ではないものの良好な治療状態が確認された」と研究の成果を強調している。とはいえ、外傷による陰茎の損傷は白膜だけでなく、神経などにも及ぶことが少なくないため、人のペイロニー病治療にはより多くのハードルがあることが想定される。この点についてShi氏は、「われわれの現時点での研究は、陰茎の一部の組織の修復に焦点を当てている。この次のステップでは、陰茎全体の修復、または人工陰茎の開発を目指すことになる」と話している。

[2023年1月5日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら