血圧測定は健康管理の基本の一つだ。ただ、家庭血圧測定にはいくつかの注意点がある。米コロンビア高血圧センターのDaichi Shimbo氏は、「血圧計を買い求め、袖をまくり上げてボタンを押すだけで血圧を測定できる。簡単そうに思えるだろう。しかし必ずしもそうとは言えない」と語る。
高血圧は、心臓発作、脳卒中、認知症などと関連のある、有病率の高い疾患だ。医師は患者の血圧変動を把握するために、家庭血圧の測定を勧める。しかしShimbo氏によると、「専門家でさえ家庭血圧測定の手順を正確に理解していないことがある」とのことだ。家庭血圧測定に関するいくつかのポイントを紹介する。
測定値の意味することは？
米国ミネアポリスに拠点を置くHealth Partners InstituteのKaren Margolis氏は、「測定結果の高い方の値は、心臓が収縮して血液を送り出したときに動脈壁にかかる圧力『収縮期血圧』、低い方の値は心臓が血液を送り出していない時に動脈壁にかかる圧力『拡張期血圧』だ。拡張期血圧は心臓がリラックスした時の値と言える」と解説する。米国心臓協会（AHA）と米国心臓病学会（ACC）は、120/80mmHg未満を成人の血圧の正常域としている。
どのような測定器を使うべきか？
Shimbo氏やMargolis氏は、血圧の適切なモニタリングには、精度検証済みの血圧計を用いるべきだとしている。精度検証済みの血圧計は、米国医師会（AMA）のwebサイトで探すことが可能だ。なお、両氏はともに、家庭血圧測定に関する2020年のAHA/AMAのレポートを共同執筆したメンバーである。
AHA/AMAのレポートによると、手首で測定するタイプよりも上腕で測定するタイプの方が良いようだ。Margolis氏は、「手首タイプは装着する位置が少しずれただけで測定値に影響が生じてしまう。ただし上腕の動脈を圧迫することを避けるべき医学的理由がある人には、手首タイプが有用かもしれない」と語っている。なお、スマートウォッチなどのカフのない血圧計については、Shimbo氏によると「スマートに見えるかもしれないが、それらのタイプで精度検証済みのものはほとんどない」とのことだ。
測定の準備は？
「測定前の準備は驚くほど難しい」とMargolis氏は言う。まず、カフェインを避ける必要がある。また、測定前30分間は運動をしない。喫煙者の場合は喫煙も避ける。そして、トイレを済ませてから5分間、座位で静かに過ごし、気が散るようなこともしない。「テレビも見ず、ポッドキャストも聴かず、本も読まないで過ごす。新聞を読んだりニュースを聞いたりしてもいけない」とMargolis氏は解説する。
タイミングは重要か？
血圧は朝に最も高く、その後は低下して睡眠中に最も低くなりやすい。よって高血圧の診断には、1週間にわたって朝2回、夕方2回測定するように求められることが多い。ただし、「どのくらいの頻度で測定するかは、医師のアドバイスに従ってほしい」とMargolis氏は話す。測定値があまり変わらない人なら、それほど頻繁に測定する必要はないとのことだ。
家庭血圧が診察室血圧と乖離している場合は？
「この質問は、家庭血圧を測定する意義の一つだ」とShimbo氏は言う。診察室血圧の方が高い場合は「白衣高血圧」、家庭血圧の方が高い場合は「仮面高血圧」と呼ばれる。ほとんどの人は診察室以外の場所で大半の時間を過ごすことから、Shimbo氏は家庭血圧の方がより重要である可能性を指摘している。
[2022年5月23日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
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