インフルエンザより早く来る!―予防の一歩は『知る』ことから

提供元:ケアネット

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公開日:2009/08/31

 



8月27日、大手町ファーストスクエアにて開催された「周産期医療最前線 ―インフルエンザより早く来る!ママの知らないRSウイルス感染症」セミナー(主催:アボット ジャパン株式会社)について、2回に分けてお届けする。東京女子医科大学の楠田聡氏は、2歳未満の子を持つ母親の、RSウイルス(RSV)に関する意識調査の結果を発表した。

日本において、早産児(在胎22~36週)の割合は増加傾向にあり、中でも32~36週での出生率が年々上昇している。一方、2歳までにほぼ100%の乳幼児が罹患するといわれるRSV感染症は、特に早産児や生後6ヵ月齢以下において、細気管支炎や肺炎などの重篤な下気道炎を引き起こし、緊急入院となったり、最悪の場合は死に至ることもある。RSV感染症に予防ワクチンおよび有効な治療法はなく、発症した場合は重篤化させないことが肝要である。

楠田氏は、早産児のRSV感染による入院の割合が10%前後であり、入院児の死亡率が1%以上という日米のデータを示した。RSV感染症は9月から流行し始め、12月にピークを迎えて4月ごろ収束する。現在、RSVに対する特異的モノクローナル抗体であるパリビズマブ(商品名:シナジス)がRSV感染による重篤な呼吸器疾患(下気道疾患)の発症を抑制する唯一の薬剤であり、早産児など高リスク群での入院率を半分以下に下げることが報告されている。

そのような現状を踏まえ、楠田氏はまず、2歳未満の子を持つ母親約1万名にインターネット調査を行った結果を述べた。子が在胎35週以下をハイリスク群とし、対象の4%弱が該当した。また、それ以外を一般群とした。

母親の疾患認知は、インフルエンザや水痘などではほぼ100%であったが、RSVは一般群で約30%、ハイリスク群でも約50%という結果であった。

また、子がRSV感染症にかかったことがある群とかかったことがない群の比較では、RSV感染症が気になる割合はそれぞれおよそ90%と60%であった。しかし、RSV感染症において、早産児が重症化しやすいことや、パリビズマブの事前投与で重症化が防止できることについては、どちらも同じ程度の認知度であった。

母親に疾病情報を提示した前後を比較すると、「RSV感染症が健康に重大な影響を及ぼすと思う」とした割合が増えた。中でも、提示前にRSVを知らなかった群では、25%から80%以上に増加した。

一方、パリビズマブの認知度は、ハイリスクの在胎33週群においては比較的高かった。しかし、RSV感染症による入院率が33週群とほぼ同じである在胎35週群では、その半分以下にとどまった。パリビズマブ非投与の理由としては、「パリビズマブを知らない」「医師に薦められなかった」「RSVを知らない」がほとんどを占め、価格や副作用など他の理由は少なかった。

以上より、楠田氏は、早産児では重症RSV感染症のリスクが高く、パリビズマブでその重症化を抑制できることを知らせていくことが重要であるとまとめた。

(ケアネット 板坂 倫子/呉 晨)