慢性膵炎の臨床疫学的特徴を明らかにするため、本邦では1994年以来、4~5年ごとに全国疫学調査が実施されてきた。慢性膵炎患者数は、1994年(3万2,000例)から2011年(6万7,000例)にかけて一貫して増加傾向にあったが、2016年の調査で初めて減少していた(5万6,520例)。東北大学の正宗 淳氏らは、2021年に参加病院で診療された慢性膵炎患者を対象とした全国規模の疫学調査を実施。その結果、2021年の慢性膵炎患者数は7万3,590例と推計され、2016年と比較して30%増加していることが明らかになった。本研究結果は、Journal of Gastroenterology誌オンライン版2026年9月11日号に掲載された。
本研究は2段階方式で実施され、第1段階調査では、「慢性膵炎臨床診断基準 2019(日本膵臓学会)」に基づき確診または準確診と判定された慢性膵炎患者数および新規診断患者数を推計し、第2段階調査では詳細な臨床情報を収集した。詳細な臨床データは4,633例で利用可能であった。
主な結果は以下のとおり。
・2021年における確診または準確診の慢性膵炎患者数は7万3,590例と推計され、これは2016年から30%の増加に相当した。有病率は人口10万対58.6であった。
・新規診断患者数は1万7,490例と推計され、年間発症率は人口10万対13.9であった。
・詳細な臨床情報が得られた4,633例において、男女比は4.15:1であった。2021年時点の平均年齢は64.4歳、診断時平均年齢は58.7歳であった。
・慢性膵炎の原因としては、アルコール関連が69.6%と最も多く、次いで特発性が24.3%であった。
・とくに女性では、アルコール関連慢性膵炎が39.5%を占め、これまでの全国調査で最も高い値を示した。
・糖尿病は45.8%、膵外分泌機能不全は36.6%に認められた。
・膵石および/または膵管狭窄に対して治療を受けた患者では、初回介入として内視鏡治療が92.8%で実施されていた。
・調査時点までに悪性腫瘍が確認された患者は18.0%で、89例は膵臓がんであった。
著者らは本研究結果について、日本における慢性膵炎患者数は引き続き増加しており、患者の高齢化や女性におけるアルコール関連慢性膵炎の増加といった疫学的変化が明らかになったとしている。また、糖尿病、膵外分泌機能不全、悪性腫瘍などの合併症による負担は、慢性膵炎が医療に及ぼす影響の増大を示すものであり、効果的な予防策と長期管理戦略の必要性が浮き彫りになったとまとめている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)