高血圧と脂質異常症は、認知症の修正可能な危険因子であり、スタチンと降圧薬の併用は保護的な効果をもたらす可能性がある。しかし、特定の薬剤の組み合わせに関するエビデンスは依然として限られている。オーストラリア・タスマニア大学のEyayaw Ashete Belachew氏らは、アンジオテンシンII(Ang-II)産生を増加させる降圧薬(Ang-II産生促進薬)とスタチンの併用と、Ang-II産生を減少させる降圧薬(Ang-II産生抑制薬)とスタチンの併用を、認知症リスクとの関連について比較検討した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌2026年8月号の報告。
オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の大規模な地域住民コホートである45 and Up Studyのデータを用いて、プロスペクティブに検討を行った。対象は、高血圧および脂質異常症を有し、スタチンと降圧薬を併用している45歳以上の患者であった。対象患者を、スタチンとAng-II産生促進薬(アンジオテンシンII受容体拮抗薬[ARB]、サイアザイド系利尿薬、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬[DHP-CCB])の併用群と、スタチンとAng-II産生抑制薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬[ACEI]、β遮断薬[BB]、非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬[非DHP-CCB])の併用群に分類した。薬剤への曝露は、服薬期間割合(PDC、80%以上)に基づき判定した。1対1の傾向スコアマッチングを用いて、両群のベースライン特性をマッチングさせた。食事、身体活動、併存疾患、併用薬で調整したハザード比(HR)を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・マッチングを行った3万4,610例(各群1万7,305例、平均年齢65.8±8.8歳、平均フォローアップ期間12.4±5.1年)を対象とした解析において、スタチンとAng-II産生促進薬の併用群は、スタチンとAng-II産生抑制薬の併用群と比較し、認知症リスクの12%低下(HR:0.88、95%信頼区間[CI]:0.79~0.98)および全死亡リスクの13%低下(HR:0.87、95%CI:0.82~0.93)との関連が認められた。
・ロスバスタチンまたはアトルバスタチンとAng-II産生促進薬の併用は、シンバスタチンとAng-II産生促進薬の併用と比較し、より大きな有益性を示した(各々、HR:0.43[95%CI:0.36~0.50]、HR:0.74[95%CI:0.64~0.84])。
・これらの効果は男女ともに一貫して認められた。しかし、保護的な関連は65~74歳の年齢層でのみ観察された。また、ARBを含む併用療法は、ACEIを含む併用療法と比較し、より優れた有益性を示した。
・死亡を競合リスクとして考慮したモデルを含む感度分析においても、これらの結果は頑健であった。
著者らは「スタチンとAng-II産生促進薬の併用は、認知症リスクの低下と関連していた。とくに、ロスバスタチンまたはアトルバスタチンとARBの併用で、より大きな有益性が確認された。このことは、認知機能への有益性が治療選択の判断材料となりうることを示唆している。今後は、ランダム化比較試験によってこれらの知見を検証し、その根底にあるメカニズムを解明する必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)