心不全(HF)診療では薬物療法や介入、退院後管理が進歩している一方、実臨床での診療内容の変化と患者転帰への影響は十分に明らかになっていない。米国・マサチューセッツ工科大学の遠山 岳詩氏らは、日本の2つの大規模HFレジストリを比較し、HF診療と転帰の変化を検討した。その結果、ガイドライン推奨治療や患者教育の実施率が増加し、1年死亡およびHF再入院はいずれも低下していた。本結果は、European Heart Journal誌オンライン版2026年8月8日号に掲載された。
本研究は、2013年のJROADHF(1万3,238例)と2019~21年のJROADHF-NEXT(4,016例)を対象に、1:1の傾向スコアマッチングを行い、各コホートの患者転帰を比較した。比較対象は2013年コホートと2019~21年コホートで、診療内容としてレニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、心臓リハビリテーション、栄養指導などの実施状況を評価した。主な評価項目は1年死亡およびHF再入院で、転帰改善に関連する因子も解析された。
主な結果は以下のとおり。
・傾向スコアマッチング後の解析対象は、2013年コホート2,972例、2019~21年コホート2,972例であった。
・マッチング後、RAS阻害薬の使用割合は2013年コホート70.9%、2019~21年コホート73.1%、β遮断薬はそれぞれ74.9%、80.8%であり、いずれも2019~21年コホートで高かった。
・MRAの使用割合は、2013年コホート54.2%、2019~21年コホート61.1%であった。
・非薬物療法・患者教育では、心臓リハビリテーションの実施割合が43.5%から88.8%へ、栄養指導が2.9%から56.1%へ増加していた。
・2019~21年コホートでは2013年コホートと比較して、1年死亡率が13.5%から9.9%へ低下し、相対的に26.7%低下した。1年HF再入院率は28.0%から13.4%へ低下し、相対的に52.1%低下した(いずれもp<0.001)。
・死亡リスクの低下は、RAS阻害薬(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.64~0.80、p<0.001)およびβ遮断薬(HR:0.85、95%CI:0.75~0.96、p=0.012)による薬物療法と関連していた。
・患者教育では、栄養指導が死亡リスク低下と関連していた(HR:0.76、95%CI:0.64~0.89、p=0.001)。
・HF再入院は、コホート効果が最も強い予測因子であり、2019~21年コホートでリスクが低かった(subdistribution HR:0.49、95%CI:0.43~0.57、p<0.001)。
著者らは、「2013年から2019~21年にかけて、日本のHF患者の長期転帰は改善し、ガイドライン推奨治療は生存ベネフィットと関連していた」とする一方、「HF再入院の大幅な低下は、薬物療法のみならず退院後ケアや医療提供体制の変化を反映した可能性がある。本研究はレジストリに基づく観察研究であり、残余交絡や時代背景の影響を除外できず、因果関係の解釈には注意が必要」とまとめている。
(ケアネット 土井 舞子)