統合失調症は、遺伝性の高い神経精神疾患である。そのゲノム構造は、注意欠如多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)などの神経発達障害のゲノム構造と重複することが報告されている。しかし、ADHDおよびASDのゲノムリスクが統合失調症症状に及ぼす影響は依然として不明であった。東北大学の宮原 一総氏らは、統合失調症における抗精神病薬の治療反応性に神経発達障害の遺伝的リスクが影響するかを検討するため、死後脳を用いてゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。Frontiers in Psychiatry誌2026年4月27日号の報告。
統合失調症患者24例と対照群48例の死後脳からGWASデータを取得し、公開されているGWASデータを用いて多遺伝子リスクスコア(PRS)を算出した(ADHD:ADHD-PRS、ASD:ASD-PRS)。生前の臨床情報が入手可能な統合失調症患者19例を対象に、PRS、統合失調症症状の重症度、抗精神病薬治療反応性スコア(ARS)との相関分析を実施した。さらに、ADHD-PRSに基づいて患者を2つのサブグループ(ADHD-PRS高値群と低値群)に分類し、前頭前皮質における探索的遺伝子発現解析およびその後のパスウェイ解析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・陽性症状のARSは、ADHD-PRSと負の相関、ASD-PRSと正の相関を示したが、これらの関連性は多重検定補正後には統計学的に有意ではなかった。
・全般的精神病理のARSおよび陰性症状のARSと、ADHD-PRSまたはASD-PRSとの間には相関は認められなかった。
・遺伝子発現解析により、CHRNB2を含む神経精神疾患関連遺伝子など1,773個の差次的発現遺伝子が同定された。
・これらの差次的発現遺伝子は、神経系およびミトコンドリア機能に関連する経路に多く認められた。
著者らは「本研究の結果は、神経発達障害のゲノムリスクが統合失調症患者の抗精神病薬に対する治療反応性に影響を及ぼしている可能性があり、この表現型における潜在的なマーカー分子が関与していることを示唆している。本研究のサンプルサイズが限られているため、探索的知見を検証するには、大規模コホートでのさらなる研究が必要とされる」としている。
(鷹野 敦夫)