糖尿病患者数は全世界8億2,200万例に上り、日本国内でも約1,000万例に達している。東京医科大学形成外科学分野 松村 一氏は、「難治性足潰瘍治療の現状とアンメット・ニーズ」と題し講演した。
約10%が切断に至る糖尿病性足潰瘍(DFU)
糖尿病合併症の1つであるDFUは血流障害と神経障害を背景に発症する。近年、患者数は増加し続けている。長期にわたるDFUは感染や組織障害を起こし足の切断に至る。生命予後も悪く、切断に至った場合の5年死亡率は全がんよりもさらに高い。従来はデブリードマン、オフローディング(免荷)、血行再建、感染制御などの治療が行われるが、約10%が切断に至り、治癒しても再発が多い。
天然の組織増殖を促すヒト羊膜製品
そのような中、マイメディクスのヒト羊膜エピフィックスが保険償還されている。エピフィックスは難治性創傷(DFUおよび静脈うっ滞性潰瘍)の治療促進を目的としたヒト羊膜絨毛膜の同種移植片である。傷の大きさに合わせて製品を切り取り、清浄化した創面に貼付するという簡便な手技で使用できる。
ヒト羊膜は、胎児を包む膜であり、移植に用いても免疫学的に拒絶反応が起こりにくい免疫特権組織として知られている。エピフィックスには300種類以上の調整タンパク質が含まれる。慢性創傷ではタンパク質を壊すマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が、MMPを阻害する組織プロテアーゼ阻害因子(TIMP)より優位となり治癒を妨げる。エピフィックスにはMMPを上回るTIMP(28対1以上)が含まれており、天然組成の組織増殖に適した環境を提供する。さらに、エピフィックスには幹細胞を創部へ誘導し、組織の再生と治癒を促進する働きもあるとされる。
高い治癒効果、再発抑制、切断リスクの軽減を実現
従来の創傷治療デバイスが「傷を小さくする」ことを主眼としていたのに対し、エピフィックスは傷を完全に治すことができるという点が異なる。完全な創閉鎖は、感染リスクや再発リスクの軽減に直結し、下肢切断のリスクを減らす。海外データによれば、エピフィックスは難治性創傷の再発を低減し、9〜12ヵ月後も94%が完全治癒を維持している。また、小切断を10%、大切断を50%削減するという結果も発表されている。
エピフィックスの使用は、難治症例に限定されており、使用期間も定められている。また、使用する医師や施設の要件も設定されている。すでに日本国内で5,000シート以上が販売されているが、この有効性の高い治療をさらに普及させ、救肢できる患者を増やす努力が必要だ。そのためには形成外科以外の診療科医師への知識共有、そして患者側の認知度向上に向けた活動が必要、と松村氏は提言する。
(ケアネット 細田 雅之)