小型NSCLC、STAS陽性は術式にかかわらず予後不良(JCOG0802/WJOG4607L)/WCLC2025

提供元:ケアネット

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公開日:2025/09/17

 

 臨床病期IA期で最大腫瘍径2cm以下の肺野末梢小型非小細胞肺がん(NSCLC)において、Spread Through Air Spaces(STAS)陽性は予後不良因子であることが示された。肺野末梢小型NSCLC患者を対象に、区域切除と肺葉切除を比較した無作為化非劣性検証試験「JCOG0802/WJOG4607L試験」の付随研究の結果を、谷田部 恭氏(国立がん研究センター中央病院 病理診断科 科長)が世界肺がん学会(WCLC2025)で報告した。

 JCOG0802/WJOG4607L試験は、臨床病期IA期の肺野末梢小型NSCLC患者(最大腫瘍径2cm以下かつC/T比0.5未満)を対象に、区域切除の肺葉切除に対する全生存期間(OS)の非劣性を検証することを目的として実施された試験である。本試験において、区域切除の肺葉切除に対するOSの非劣性が検証されただけでなく、区域切除の優越性も示されたことが報告されている1)

 STASは、肺胞腔内に腫瘍細胞の分離性増殖を認める浸潤形態の1つであり、とくに縮小手術において、STAS陽性例は局所再発が多く予後が不良であることが報告されている。しかし、縮小手術例と肺葉切除例の両者を含む集団でSTASの影響を検討した研究は乏しい。そこで、JCOG0802/WJOG4607L試験の登録患者を対象として、本研究が実施された。

 本研究の主な結果は以下のとおり。

・646例の病理検体が評価され、評価可能であった640例(区域切除群318例、肺葉切除群322例)のうち35%(227/640例)がSTAS陽性であった。
・STASの有無別に無再発生存期間(RFS)をみると、STAS陽性例はRFSが不良であった(p<0.0001、log-rank検定)。5年RFS率はSTAS陽性83.7%、STAS陰性92.5%で、10年RFS率はそれぞれ67.1%、84.6%であった。多変量解析においてもSTAS陽性はRFS不良の独立した予測因子であった(ハザード比[HR]:1.880、95%信頼区間[CI]:1.347~2.625、p=0.0002)。
・STAS陽性例はOSも不良であった(p<0.0001、log-rank検定)。5年OS率はSTAS陽性92.0%、STAS陰性94.7%で、10年OS率はそれぞれ73.1%、86.7%であった。多変量解析においてもSTAS陽性はOS不良の独立した予測因子であった(HR:1.692、95%CI:1.181~2.424、p=0.004)。
・術式別にRFSとOSをみると、RFSはSTAS陽性例が術式にかかわらず不良であり、OSは肺葉切除群でSTAS陽性例が不良であった。術式別の再発率は以下のとおり(STAS陽性vs.STAS陰性を示す)。
 -10年RFS率(区域切除):69.4%vs.85.1%(HR:1.962、95%CI:1.212~3.175)
 -10年RFS率(肺葉切除):64.8%vs.84.0%(HR:1.976、95%CI:1.204~3.242)
 -10年OS率(区域切除):80.0%vs.88.4%(HR:1.560、95%CI:0.911~2.671)
 -10年OS率(肺葉切除):66.9%vs.84.9%(HR:1.858、95%CI:1.109~3.114)
・局所再発はSTAS陽性例が術式にかかわらず多く、遠隔再発は区域切除群でSTAS陽性例に多くみられた。術式別の再発率は以下のとおり(STAS陽性vs.STAS陰性を示す)。
 -局所再発(区域切除):17.6%vs.6.2%(p=0.004)
 -局所再発(肺葉切除):16.7%vs.6.2%(p=0.001)
 -遠隔再発(区域切除):9.3%vs.2.4%(p=0.006)
 -遠隔再発(肺葉切除):9.2%vs.4.9%(p>0.05)
・非粘液性肺腺がんの組織学的Grade3の集団はSTAS陽性例が多く、Grade3の集団はGrade1/2の集団と比較して、RFSおよびOSが不良であった。

 本結果について、谷田部氏は「STAS陽性はRFS不良、OS不良の独立した予測因子であった。また、STAS陽性例は区域切除と肺葉切除のいずれでも局所再発が多かった。これらの結果は、STASの有無にかかわらず、区域切除が肺葉切除に対して非劣性であることを示している」とまとめ、「縮小手術でSTAS陽性であったとしても、肺葉切除への変更は必要ないかもしれない。むしろ、STAS陽性のStageIAのNSCLCという予後不良な集団に対して、術後補助療法を検討することを支持する結果である」と考察した。

(ケアネット 佐藤 亮)

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