将来起こりうる心疾患や悪性腫瘍を予防したいとは誰もが思う。これらを予測する生物学的マーカーについては、長年さまざまな研究が行われている。今回、この予測マーカーについて、東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝・内分泌内科学分野の佐藤 大樹氏らの研究グループは、岩手県花巻市大迫町の平均62歳の住民を対象に糖摂取後の血糖値と寿命の関係を調査した。その結果、ブドウ糖負荷後1時間血糖値(1-hrPG)が170mg/dL未満の群では、1-hrPG170mg/dL以上の群と比較して、心臓疾患などの死亡が少ないことが明らかになった。この研究結果は、PNAS NEXUS誌2025年6月2日号に掲載された。
死亡予測にブドウ糖負荷後1時間血糖値170mg/dLが目安になる可能性
研究グループは、大迫町研究を基に前向きコホート研究として、75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を受けた993人の参加者を対象に糖負荷試験などの検査結果と死亡の関係を調査した。OGTT中に測定されたものを含む血液パラメーターを収集し、各パラメーターの中央値に基づいて研究対象を2つのグループに分け、両グループにおける追跡期間中の死亡率を分析した。さらに、正常耐糖能(NGT)の参加者595人を抽出し、1-hrPGと死亡率および死亡原因との関連性を分析した。
主な結果は以下のとおり。
・平均追跡期間14.3年間では、評価したすべてのパラメーターのうち1-hrPGが、全原因死亡率と最も有意に関連していた。
・NGTの参加者にフォーカスした場合、HarrellのC一致指数分析では、1-hrPG170mg/dL以上が全原因死亡率と最も強く関連していることが示された(0.8066)。
・カプランマイヤー曲線では、3年目以降の追跡期間中、1-hrPG170mg/dL以上群の死亡率が、1-hrPG170mg/dL未満群のほぼ2倍であることが示された。
・心血管疾患と悪性腫瘍は、高1-hrPG群の死亡率上昇に強く寄与していた。
・1-hrPG170mg以上群は、NGTを有する参加者においては将来の死亡予測の強力な因子となる。
・動脈硬化性疾患と悪性腫瘍は、共に死亡率の上昇に寄与していた。
(ケアネット 稲川 進)