単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)感染がアルツハイマー病(AD)発症リスクと関連しており、抗ヘルペス薬の使用がそのリスクを低減する可能性が、米国の大規模リアルワールドデータを用いた後ろ向き症例対照研究で示された。本研究は、米国・ギリアド・サイエンシズのYunhao Liu氏らにより実施された。BMJ Open誌2025年5月20日号に掲載。
本研究では、米国の大規模民間保険請求データベース「IQVIA PharMetrics Plus」を用い、2006~21年の間にADと診断された50歳以上の患者34万4,628例を特定し、年齢、性別、地域、データベース登録年、医療機関受診回数でマッチングした同数の対照者を1対1の割合で抽出し、後ろ向きマッチング症例対照研究を実施した。
主な結果は以下のとおり。
・AD症例群と対照群はともに、平均年齢は73±5歳、女性が65.11%であった。
・AD症例群ではHSV-1感染の診断歴がある人の割合が0.44%(1,507例)だったのに対し、対照群では0.24%(823例)であった。
・多変量解析で調整後、HSV-1感染の診断歴はAD発症リスクの有意な上昇と関連していた(調整オッズ比[aOR]:1.80、95%信頼区間[CI]:1.65~1.96)。
・層別解析ではとくに高齢者で顕著であり、75歳以上の年齢層ではaORが2.10(95%CI:1.88~2.35)であった。
・HSV-1感染の診断歴のある患者群(2,330例)において、抗ヘルペス薬を使用した人(931例、40%)は、使用しなかった人と比較してAD発症リスクが有意に低かった(調整ハザード比[aHR]:0.83、95%CI:0.74~0.92)。
・抗ヘルペス薬による同様の保護効果は、AD関連認知症の解析でも認められた。
・本研究において、HSV-2(単純ヘルペスウイルス2型)および水痘・帯状疱疹ウイルス感染の診断歴もADとの関連が認められたが、サイトメガロウイルスでは有意な関連はみられなかった。
著者らは、「これらの知見は、ヘルペスウイルスの予防を公衆衛生上の優先事項として捉えることの重要性をさらに強調するものであり、神経親和性ウイルスの抑制がADおよびAD関連認知症の自然経過を変えるかどうかを判断するためのさらなる研究が必要だ」と結論付けている。
(ケアネット 古賀 公子)