コロナ入院患者の院内死亡リスク、オミクロン後もインフルの1.8倍超/感染症学会・化学療法学会

提供元:ケアネット

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公開日:2025/05/19

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、オミクロン株流行以降、重症度が低下したとする報告がある一方、インフルエンザと比較すると依然として重症度が高いとの報告もある。国内の死亡者数においても、5類感染症移行後、COVID-19による死亡者数はインフルエンザの約15倍に上ると厚生労働省の統計で報告されている。こうした背景から、長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの研究グループは、COVID-19患者の入院中の死亡リスクをインフルエンザ患者と比較評価した。本結果は、5月8~10日に開催された第99回日本感染症学会総会・学術講演会/第73回日本化学療法学会総会 合同学会にて、前田氏が発表した。

 本研究は、徳洲会メディカルデータベースを用いた後ろ向きコホート研究として実施された。DPCシステムに加入する50施設のデータから、18歳以上で入院契機病名がCOVID-19またはインフルエンザである患者を対象とした。解析対象期間は、インフルエンザ患者が2018年1月~2022年12月、COVID-19患者が2020年3月~2022年12月。両検査陽性者、入院時病名と検査結果の不一致例、COVID-19患者における抗体投与目的と考えられる短期入院例、転帰不明例は除外された。統計解析には、競合リスクを考慮した原因別ハザードモデルを使用し、インフルエンザ患者と比較したCOVID-19患者の院内死亡ハザード比を算出した。年齢、性別、チャールソン併存疾患指数(CCI)、高齢者施設入所の有無、入院医療機関を調整因子とした。90日超の入院は90日で打ち切りとした。また、COVID-19の流行時期による臨床状況の変化を考慮し、以下の3期間に分けて解析を行った。
・I期:流行開始~ワクチン導入前(2020年3月~2021年2月)
・II期:ワクチン導入後~オミクロン株流行前(アルファ株、デルタ株流行期)(2021年3月~2021年12月)
・III期:オミクロン株流行期(2022年1月~2022年12月)

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象は、COVID-19入院患者1万8,336例、インフルエンザ入院患者2,657例。年齢中央値は、COVID-19患者のI期(3,695例):65歳(四分位範囲:48~78)、II期(5,959例):55歳(44~71)、III期(8,682例):80歳(68~88)、インフルエンザ患者:82歳(74~88)。
・院内死亡割合は、インフルエンザ患者で5.9%に対し、COVID-19患者ではIII期(オミクロン株流行期)が9.1%であった。I期は6.3%、II期は5.5%であった。
・人工呼吸器やHFNC/NPPVの使用割合は、アルファ株やデルタ株が流行したII期が最も高かった。
 -人工呼吸器の使用:COVID-19 II期 7.8%vs.インフルエンザ 3.5%
 - HFNC/NPPVの使用:COVID-19 II期 8.8%vs.インフルエンザ 0.6%
・入院期間は、COVID-19の全期間とインフルエンザでほぼ同様の約10日であった。
・インフルエンザと比較したCOVID-19の院内死亡ハザード比は、I期:1.51(95%信頼区間[CI]:1.16~1.96)、II期:2.21(1.73~2.83)、III期:1.85(1.53~2.24)であり、II期が最も高かった。
・入院時に酸素投与が必要であった患者に限定した場合も、I期:1.76(95%CI:1.18~2.64)、II期:2.17(1.50~3.14)、III期:2.01(1.53~2.65)となり、同様の傾向が認められた。

 前田氏は本研究の結果について「COVID-19入院患者は、インフルエンザの入院患者と比較して、全期間を通じて院内死亡リスクが高いことが明らかになった。入院時に酸素投与を受けた患者に限定した解析でも同様の結果であり、入院時点で一般に入院適応があると考えられる患者に限定しても、COVID-19の死亡リスクが高いことが示唆された。新型コロナワクチン導入後の期間においては、入院患者が若年であり、入院時点でワクチン接種が完了していない集団であった可能性が考えられるが、本研究ではワクチン接種歴のデータが含まれていないため、今後の検討課題としたい」と結論付けた。

(ケアネット 古賀 公子)