心不全患者の亜鉛不足、死亡や腎不全が増加

提供元:ケアネット

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公開日:2025/05/20

 

 台湾・Chi Mei Medical CenterのYu-Min Lin氏らは、心不全(HF)患者の亜鉛欠乏が死亡率、心血管系や腎機能リスクおよび入院リスクの上昇と関連していることを明らかにした。Frontiers in Nutrition誌2025年4月28日号掲載の報告。

 HF患者では、利尿薬やRA系阻害薬といった降圧薬の使用などが原因で、亜鉛欠乏症(ZD)の有病率が高いことが報告されている1,2)。また、亜鉛補充により左室駆出率を改善させる可能性も示唆されている3)が、亜鉛がHFの臨床転帰に与える影響を調査した大規模研究はほとんど行われていなかった。

 本研究は、ZDとHFの臨床転帰との関連性を調べる目的で実施された多施設共同後ろ向きコホート研究である。2010年1月1日~2025年1月31日にHFを発症した成人患者をTriNetX社のネットワークと提携する世界142施設の医療機関の1億6,056万2,143例から年齢などの基準を満たす適格患者を抽出。血清亜鉛値が70μg/dL未満のZD患者(ZD群)と70~120μg/dL患者(対照群)を傾向スコアマッチングにて栄養状態、アルブミン値、利尿薬やβ遮断薬の使用などの交絡因子で調整し、8,290例(各群4,145例)について、1年間の追跡調査を行った。主要評価項目は、全死亡、主要心血管イベント(MACE)、主要腎イベント(MAKE)**で、副次評価項目は全入院であった。
*急性心筋梗塞、脳卒中(脳梗塞および脳出血を含む)、心室性不整脈(心室頻拍や心室細動など)、心停止を含む。
**末期腎不全、緊急透析の開始、維持透析を含む。

 主な結果は以下のとおり。

・ZD群では、全死亡において対照群と比較して有意に高い累積罹患率を示し(ハザード比[HR]:1.46、95%信頼区間[CI]:1.29~1.66、p<0.001)、100人年あたりの罹患率はZD群で13.47、対照群で9.78であった。
・MACEの上昇についてもZD群に関連し(HR:1.46、95%CI:1.30~1.64)、MAKEの上昇も同様に関連していた(HR:1.51、95%CI:1.34~1.70)。
・全入院リスクも対照群と比較してZD群は高かった(HR:1.24、95%CI:1.16~1.32)。

 研究結果より、研究者らは「心不全治療における亜鉛の評価と管理の臨床的重要性が浮き彫りになった」としている。

(ケアネット 土井 舞子)