進行性肺線維症(PPF)に対する治療は、原疾患の標準治療を行い、効果不十分な場合に抗線維化薬を使用するが、早期からの抗線維化薬の使用が有効な可能性も考えられている。そこで、未治療PPFに対する抗線維化薬ニンテダニブ+抗炎症薬の同時導入療法の安全性と有効性を検討する国内第II相試験「TOP-ILD試験」が実施された。本試験において、ニンテダニブ+抗炎症薬の同時導入療法は、治療継続率が高く、有効性についても良好な結果が得られた。第65回日本呼吸器学会学術講演会において、坪内 和哉氏(九州大学病院)が本試験の結果について解説した。
・試験デザイン:医師主導国内第II相単群試験
・対象:%FVC(努力肺活量の予測値に対する実測値の割合)が50%以上の未治療PPF※患者34例
・治療方法:1~7日目にプレドニゾロン(10mg、1日1回)+タクロリムス(0.075mg/kg、1日2回)→8日目以降にニンテダニブ(300mg、1日2回)+プレドニゾロン(10mg、1日1回)+タクロリムス(0.075mg/kg、1日2回)
・評価項目:
[主要評価項目]同一患者における治療介入前と治療介入後24週間の%FVC変化率(相対値)の差
解析計画:治療介入前と治療介入後24週間の%FVC変化率(相対値)の差が0より有意に大きい場合に主要評価項目達成とした。
※:特発性非特異性間質性肺炎(iNSIP)、分類不能型特発性間質性肺炎(分類不能型IIPs)、線維性過敏性肺炎、関節リウマチに伴う間質性肺疾患(RA-ILD)のいずれか
主な結果は以下のとおり。
・対象患者34例中32例が試験を完遂した。
・対象患者の登録時の診断名は、分類不能型IIPsが16例、線維性過敏性肺炎が15例、iNSIPが2例、RA-ILDが1例であった。
・対象患者の年齢中央値は71歳、男性の割合は64.7%であった。%FVC(平均値±標準偏差[SD])は75.2±17.1%、%DLco(平均値±SD)は58.2±12.6%であった。自己抗体陽性の割合は23.5%、気管支肺胞洗浄液(BALF)中のリンパ球割合(中央値)は9.0%(範囲:0.4~78.8)であった。UIP(通常型間質性肺炎)like patternを呈する割合は58.8%であった。
・プレドニゾロン、タクロリムス、ニンテダニブの減量に至った割合はそれぞれ11.8%、8.8%、33.3%であった。有害事象のため薬剤中止となった症例はいなかった。
・%FVCの相対変化率(%/年)は、治療介入前24週間が-20.9%であったのに対し、治療介入後24週間では11.2%であった。主要評価項目の治療介入前と治療介入後24週間の%FVC変化率(相対値)の差は32.1%(95%信頼区間:17.2~47.0)となり、主要評価項目は達成された。
・サブグループ解析(BALF中のリンパ球割合20%以上/未満、UIP like patternあり/なし)において、いずれの集団でもニンテダニブと抗炎症薬の同時導入療法による良好な治療効果が示された。
本結果について、坪内氏は「抗線維化薬と抗炎症薬の同時導入療法は治療継続率が高く、有効な治療法となる可能性が示唆された。今後は治療開始後52週まで追跡し、有効性および安全性を検討する予定である」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)