アリピプラゾール持続性注射剤の治療継続に影響する要因

提供元:ケアネット

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公開日:2025/05/16

 

 アリピプラゾール持続性注射剤(LAI)は、有効性が良好であり、臨床現場で広く用いられる薬剤である。注目すべきことに、韓国人集団におけるアリピプラゾールLAIの治療継続に及ぼす要因を検討した研究は、これまでなかった。韓国・Inha University College of MedicineのSoyeon Chang氏らは、アリピプラゾールLAIの治療継続に影響を及ぼす実臨床における要因を明らかにするため、1年間のレトロスペクティブコホート研究を実施した。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2025年5月31日号の報告。

 韓国・Inha University Hospitalにおいて、アリピプラゾールLAI治療を開始した患者68例を対象に、1年間のレトロスペクティブコホート研究を実施した。患者の診療記録をレビューし、治療継続率、継続中止までの期間、継続中止理由の評価を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・12ヵ月以内にアリピプラゾールLAIを中止した患者の割合は27.9%。
・主な継続中止理由は、効果不十分(42.1%)、副作用(31.6%)、経口薬の希望(21.1%)であった。
・単変量解析により、継続中止と患者コンプライアンスとの関連が明らかとなった。
・社会人口統計学的因子で調整した後、アリピプラゾールLAIの治療継続と関連していた因子は、患者のコンプライアンス、パリペリドンLAIからアリピプラゾールLAIへの移行であった。
・社会人口統計学的因子およびコンプライアンスを調整した多重ロジスティック回帰分析では、継続中止とコンプライアンスとの間に有意な関連が認められた。

 著者らは「本結果と同様のデザインで実施したパリペリドンLAIの試験結果と比較すると、アリピプラゾールLAIは1年間の継続中止率が低いことから、臨床的な有用性が支持される結果であった。LAIの継続中止に関連する因子を明確にするためには、大規模かつ長期的なプロスペクティブ研究が不可欠であろう」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)