重症精神疾患に対する抗精神病薬+メトホルミン併用の有用性

提供元:ケアネット

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公開日:2025/05/15

 

 メトホルミンは、重症精神疾患患者における第2世代抗精神病薬(SGA)誘発性体重増加を軽減するための薬理学的介入の候補薬剤である。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのLuiza Farache Trajano氏らは、SGAによる治療を開始する重症精神疾患患者におけるメトホルミン併用の割合、有病率、人口統計学的パターンを明らかにし、SGA開始後2年間におけるメトホルミン併用が体重変化に及ぼす影響を推定するため、コホート研究を実施した。BMJ Mental Health誌2025年4月2日号の報告。

 Clinical Practice Research Datalinkのプライマリケアデータを用いて、2005〜19年にアリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンによる治療を開始した重症精神疾患患者を対象に、コホート研究を実施した。メトホルミン併用の累積割合、期間有病率を推定し、人口統計学的および臨床的因子による併用処方率の違いを調査した。交絡因子を考慮し、SGA単独またはSGA+メトホルミン併用で治療された患者の体重変化について線型回帰法を用いて比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・SGA治療を開始した患者2万6,537例のうち、メトホルミン併用患者は4,652例、非併用患者は2万1,885例であった。
・2年間のメトホルミン初回処方割合は3.3%であった。
・SGA+メトホルミン併用群は、民族的に多様性であり、社会的貧困度が高く、合併症割合が高く、ベースライン時の体重が多かった(平均体重:90.4kg vs.76.8kg)。
・SGA開始後2年間での平均体重の変化は、SGA単独群では4.16%増加(95%信頼区間[CI]:−1.26〜9.58)したのに対し、SGA+メトホルミン併用群では0.65%の減少が認められた(95%CI:−4.26〜2.96)。
・交絡因子で調整したのち、SGA+メトホルミン併用群における2年間の平均体重差は、女性で1.48kg(95%CI:−4.03〜1.07)、男性で1.84kg(95%CI:−4.67〜0.98)の減少がみられた。

 著者らは「メトホルミンは、SGA誘発性体重増加の軽減に有効であることがガイドラインにも示されているにもかかわらず、併用されることは少ないことが明らかとなった。1次、2次医療の連携を強化し、併用処方の障壁に対処する必要があることが示唆された」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)