青年期の統合失調症に対する現在の治療は、不十分であり、新たな治療オプションが求められている。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & CommercializationのCaroline Ward氏らは、青年期統合失調症に対するブレクスピプラゾール治療の短期的有効性および安全性を評価するため、10ヵ国、62施設の外来診療における国際共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験を実施した。The Lancet Psychiatry誌2025年5月号の報告。
同試験の対象は、DSM-5で統合失調症と診断され、スクリーニング時およびベースライン時に陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコア80以上であった13〜17歳の患者。ブレクスピプラゾール群(2〜4mg/日)、プラセボ群、アリピプラゾール群(10〜20mg/日)のいずれかに1:1:1でランダムに割り付けられた。主要有効性エンドポイントは、PANSS合計スコアのベースラインから6週目までの変化とした。安全性は無作為に割り付けられ、試験薬を1回以上投与された患者について評価を行った。
主な結果は以下のとおり。
・2017年6月29日〜2023年2月23日にスクリーニングされた376例のうち、316例がランダム化された。内訳は、ブレクスピプラゾール群110例、プラセボ群104例、アリピプラゾール群102例。
・対象患者の平均年齢は、15.3±1.5歳。女性は166例(53%)、男性は150例(47%)。
・米国国勢調査局分類による人種別では、白人204例(65%)、黒人またはアフリカ系米国人21例(7%)、アメリカ先住民またはアラスカ先住民7例(2%)、アジア人2例(1%)、その他81例(26%)。
・最終診察時の平均投与量は、ブレクスピプラゾールで3.0±0.9mg、アリピプラゾールで13.9±4.7mgであった。
・PANSS合計スコアのベースラインから6週目までの最小二乗平均値変化は、ブレクスピプラゾール群で−22.8±1.5、プラセボ群で−17.4±1.6(プラセボ群との最小二乗平均値差:−5.33、95%信頼区間[CI]:−9.55〜−1.10、p=0.014)であった。アリピプラゾール群は−24.0±1.6であり、プラセボ群との最小二乗平均値差は−6.53(95%CI:−10.8〜−2.21、p=0.0032、多重検定調整なし)であった。
・治療中に発生した有害事象は、ブレクスピプラゾール群で44例(40%)、プラセボ群で42例(40%)、アリピプラゾール群で53例(52%)発現した。
・発生率5%以上の有害事象は、ブレクスピプラゾール群では頭痛(7例)、悪心(7例)、アリピプラゾール群で傾眠(11例)、疲労(8例)、アカシジア(7例)。
・重篤な有害事象は、ブレクスピプラゾール群で1例(1%)、プラセボ群で3例(3%)、アリピプラゾール群で1例(1%)報告された。
・死亡例の報告はなかった。
著者らは「青年期統合失調症において、ブレクスピプラゾール2〜4mg/日は、プラセボと比較し、6週間にわたる症状重症度の大幅な改善に寄与することが示唆された。また、安全性プロファイルは、成人の場合と一致していた。これらの結果は、青年期統合失調症におけるブレクスピプラゾールに関するエビデンスのさらなる充実につながり、臨床現場における治療選択の参考となるであろう」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)