糖尿病予防、メトホルミンも長期効果

提供元:ケアネット

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公開日:2025/05/12

 

 米国糖尿病予防プログラム(DPP)は、2型糖尿病の発症リスクが高い成人3,234人を対象とした3年間のランダム化臨床試験で、生活習慣介入(Intensive Lifestyle Intervention:ILS、食事・運動・体重管理への集中的介入)、メトホルミン投与、プラセボ投与の3群における、2型糖尿病発症率の違いを比較することを目的としていた。2002年に糖尿病発症率がILS群で58%、メトホルミン群で31%減少したことが報告されている1)

 DPP試験はプロトコル改訂を経て、DPPアウトカムズ研究(DPPOS試験)として継続された。参加者を長期(20年以上)追跡し、治療効果の長期的な影響を評価した。本試験の結果を米国・ジョージ・ワシントン大学のWilliam C. Knowler氏らが、The Lancet Diabetes & Endocrinology誌オンライン版2025年4月28日号で報告した。

 DPPOS試験では、メトホルミン群は忍容性があれば1日2回850mgのメトホルミンを継続、ILS群には年2回のグループベースの介入を提供、プラセボ群はプラセボ投与を中止した。さらに全参加者に年4回のグループ形式の生活習慣介入を提供した。主要アウトカムは米国糖尿病協会(ADA)の基準に基づく糖尿病発症率だった。COVID-19感染流行により追跡困難例が発生したため、追跡調査期間は1996年7月31日~2020年2月23日とした。

 主な結果は以下のとおり。

・DPPに登録された3,195人が解析に含まれた。女性2,171人(68%)と男性1,024人(32%)、ベースライン時の平均年齢は50.6(SD 10.7)歳だった。追跡期間は0.2~23.2年(中央値8.0年)だった。
・プラセボ群と比較して、ILS群では糖尿病の発症率が低下した(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.68~0.85、発症率差[RD]:100人年当たり-1.59)。メトホルミン群も同様の傾向が認められ(HR:0.83、95%CI:0.74~0.93、RD:-1.17)、糖尿病未発症の生存期間はILS群で中央値3.5年、メトホルミン群で2.5年延長し、平均値で各2.0年(95%CI:1.2~2.8)、1.2年(95%CI:0.4~2.0)延長した。
・糖尿病の累積発症曲線は早期に分離しており、とくに最初の3年間で顕著で、メトホルミン群とILS群の発症率はプラセボ群よりも低かった。
・メトホルミン群とILS群の累積発症曲線は、追跡期間の延長に伴い徐々に収束した。全体的な治療効果は、DPP期間中の顕著な初期効果に起因すると推測された。介入効果は、ベースライン時の空腹時血糖値、HbA1c、複数の臨床的および生理学的リスク指標値が高い参加者ではILS群が、若年者ではメトホルミン群がより大きかった。

(ケアネット 杉崎 真名)