変形性膝関節症(膝OA)の運動療法として、ヨガと筋力増強トレーニングの有効性を比較検討した結果、両群ともに有意に膝関節痛を軽減し、ヨガ群では筋力増強トレーニング群よりも機能や硬直、健康関連QOLなどが良好であったことを、オーストラリア・タスマニア大学のBedru J. Abafita氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2025年4月8日号掲載の報告。
運動療法は、膝OAの疼痛、身体機能、日常生活機能の改善のために推奨されているが、異なる種類の運動の有用性を比較した試験は限られているため、最も効果的な運動の種類は明確ではない。また、ヨガはマインドフルネスや柔軟性、ウェルビーイングを高めることで疼痛の軽減が期待できるが、膝OAに対するヨガの有用性を示す質の高いエビデンスは少ない。そこで研究グループは、ヨガは筋力増強トレーニングよりも膝OA患者の膝関節痛を緩和し、身体機能やQOLを改善する運動として有用であるという仮説を立て、評価者盲検無作為化優越性試験を実施した。
対象は、オーストラリアのタスマニア州の膝OA患者で、100mm視覚アナログスケール(VAS)の膝痛スコア(0[痛みなし]~100[耐え難い痛み])が40mm以上の40歳以上の成人であった。参加者は24週間にわたってヨガを行う群と筋力増強トレーニングを行う群に1:1に無作為に割り付けられた。両群ともに、前半12週間は週2回の対面プログラムと週1回の在宅プログラムに参加し、後半12週間は週3回の在宅プログラムに参加した。
主要評価項目は、12週時点の膝痛VASスコアによる膝関節痛の変化で、事前に規定した非劣性マージンを10mmとした。副次評価項目は、24週時点の膝痛VASスコアによる膝関節痛の変化、12週および24週時点のWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)の疼痛スコア、機能障害スコア、硬直性スコアの変化などの27項目が設定された。
主な結果は以下のとおり。
・合計117例の参加者がヨガ群(58例)と筋力増強トレーニング群(59例)に無作為に割り付けられた。参加者のベースライン特性は類似しており、平均年齢は62.5(SD 8.3)歳、85例(72.6%)が女性であった。ベースライン時の膝痛VASスコアの平均は53.8(SD 16.0)mmであり、中等度の膝関節痛を有していた。
・両群ともに12週時点で膝痛VASスコアが改善し、ヨガ群が−17.7mm(95%信頼区間[CI]:−22.4~−13.0)、筋力増強トレーニング群が−16.7mm(95%CI:−21.4~−11.8)であったが、有意な群間差は認められなかった(平均群間差:-1.1mm[95%CI:-7.8~5.7]、p=0.76、Cohen’s d:−0.2[95%CI:−1.6~1.2])。
・24週時点の膝痛VASスコアの変化量は、ヨガ群が−24.4mm(95%CI:−29.2~−19.6)、筋力増強トレーニング群が−18.6mm(95%CI:−23.6~−13.6)で、こちらも有意な群間差は認められなかった(平均群間差:-5.8mm[95%CI:-12.9~1.2]、p=0.11、Cohen’s d:−1.1[95%CI:−2.5~0.3])。
・24週時点において、ヨガ群では27項目の副次評価項目のうち6項目(WOMAC疼痛スコア、WOMAC機能障害スコア、WOMAC硬直性スコア、患者の全般的評価、40m歩行テスト[40m fast-paced walk test]、健康関連QOL[AQoL-8Dスコア])で有意な改善を示した。
これらの結果より、研究グループは「膝OA患者の運動療法としてヨガを代替または補完的に取り入れることが、膝OAの管理に役立つ可能性がある」とまとめた。
(ケアネット 森)