胃がんT-DXd、日本における販売後調査の最終解析/日本胃癌学会

提供元:ケアネット

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公開日:2025/04/02

 

 抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は「がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌」に対し2020年9月に承認された。現在では胃がん3次治療以降に広く使用されているが、間質性肺疾患(ILD)の発現が重要なリスクとして認識されており、ILDリスクを評価する観察期間12ヵ月の製造販売後調査(PMS)が実施された。2025年3月12~14日に行われた第97回日本胃癌学会総会では、愛知県がんセンターの室 圭氏が本調査の最終解析結果を発表した。

 主な結果は以下のとおり。

・2020年9月〜2021年12月にT-DXdが投与された全1,129例が登録され、そのうち1,070例が解析対象となった。患者の年齢中央値は70.0歳(65歳以上が71.6%)、77.4%が男性であった。ECOG 0~1が90%、2~4が10%、組織型はIntestinalタイプが46.2%、Diffuseタイプが19.0%であった。
・治療期間中央値は3.94ヵ月だった。薬剤承認の根拠となったDESTINY-Gastric01試験では治療開始時のT-DXd投与量は6.4mg/kgであったが、本解析では5.4mg/kg以下での開始例が2割程度存在し、この割合は治療継続と共に増加した。
・12ヵ月時点におけるT-DXdによる治療状況は治療中11.8%、中止88.2%であった。治療中止の理由は原疾患進行が65.9%、ILDによる中止が9.9%、ILD以外の有害事象による中止が9.3%であった。
・薬剤関連ILDの発現割合は9.63%(103例)、Grade≧3が2.8%(30例)、Grade5は1.21%(13例)であり、DESTINY-Gastric01試験と同等の結果であった。ILDのタイプではOP(器質化肺炎)が64例と最多で、最も予後が悪いとされるDAD(びまん性肺胞損傷)は8例だった。
・ILDの発症タイミングは治療開始後2~3ヵ月目が最も多かったが、1~12ヵ月目のどの時期でも生じた。ILD発症患者の転帰は、回復が46.6%(48例)、軽快が21.4%(22例)、回復したが後遺症ありが5.83%(6例)、未回復が10.68%(11例)、死亡が12.62%(13例)であった。
・ILDのリスク因子は75歳以上、ILD・放射線肺臓炎・COPDそれぞれの既往だった。

 室氏は「ILDの発症頻度は既報どおりであり、診療医はこれをしっかりと認知して治療に当たる必要がある。ILDはタイプによって重症度が異なり、早期発見や専門医につなげるため、こうした分類を消化器がん診療医であるわれわれもある程度知っておくことが重要だ」とした。

(ケアネット 杉崎 真名)

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