難聴が中年期における認知症の予防可能な最大のリスク因子の1つであると報告され1)、注目を集めているものの、どの程度の難聴になったら認知症予防として補聴器を使うべきなのかは明らかになっていない。慶應義塾大学の西山 崇経氏らは、55歳以上の補聴器の装用経験がない難聴者のグループにおいて、聴力閾値と認知機能検査結果が負の相関関係を示し、4つの音の高さの聴力閾値の平均値が38.75dB HLを超えた場合に、認知症のリスクとなりうることを明らかにした。NPJ Aging誌2025年2月24日号掲載の報告。
本研究では、2022年9月~2023年9月までに慶應義塾大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科外来を受診した55歳以上で、両耳の4周波数(500/1,000/2,000/3,000Hz)における平均聴力閾値が25dB HLを超えた難聴者のうち、補聴器の装用経験がないグループ(未装用群)55例と3年以上にわたり補聴器装用を行っているグループ(長期装用群)62例の計117例を対象に、聴力と認知機能の関係について検討した。認知機能検査は、日本語版ミニメンタルステート検査(MMSE-J)と Symbol Digit Modalities Test(SDMT)の2種類が用いられた。
主な結果は以下のとおり。
・未装用群および長期装用群の平均聴力レベル(平均±SD)は、それぞれ40.83±8.16dB HLおよび51.13±14.80dB HLであった。
・未装用群において、平均聴力閾値とSDMTスコアとの間に有意な関連(p=0.01)が認められ、38.75dB HL超が認知機能に影響を及ぼすカットオフ値として同定された。
・一方、長期装用群では補聴器非装用時あるいは補聴器装用時にかかわらず平均聴力閾値とSDMTスコアとの間に有意な関連は認められなかった。
(ケアネット 遊佐 なつみ)