成人ADHD患者における自殺リスク評価、発生率や関連因子は

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/02

 

 注意欠如多動症(ADHD)と自殺傾向との関連性は、近年ますます研究対象としての関心が高まっている。自殺傾向の評価は、一般的にカテゴリ別に評価されており、検証済みの方法が使用されていないため、不均一あるいは矛盾する結果につながっている。自殺念慮や自殺企図の発生率は大きく異なり、関連するリスク因子も明らかになっていない。イタリア・トリノ大学のGabriele Di Salvo氏らは、次元アプローチおよび国際的に認められた検証済みの方法を用いて、ADHDにおける自殺傾向を調査した。Annals of General Psychiatry誌2024年11月1日号の報告。

 成人ADHD患者74例における自殺念慮、重度の自殺念慮、自殺行動、非自殺的自傷行動の発生率を評価するため、本研究を実施した。また、自殺傾向リスクの増加と関連する社会人口統計学的および臨床的特徴の検討も行った。自殺傾向の評価には、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)を用いた。自殺念慮、重度の自殺念慮、自殺行動、非自殺的自傷行動の予測因子を調査するため、ロジスティック回帰を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・自殺念慮、重度の自殺念慮の生涯発生率は、それぞれ59.5%、16.2%であった。
・生涯にわたる自殺行動は9.5%、非自殺的自傷行動は10.8%で認められた。
・生涯にわたる自殺念慮は、成人期の不注意症状の重症度、自尊心低下、社会的機能障害と関連していた。
・生涯にわたる重度の自殺念慮は、小児期の不注意症状の重症度、注意衝動性、入院回数と関連し、身体活動は保護的に作用していることが示唆された。
・生涯にわたる自殺行動および非自殺的自傷行動の発生率は、社会人口統計学的または臨床的特徴との有意な関連が認められなかった。

 著者らは「成人ADHD患者は、自殺リスクを有していると考えるべきであり、予防的介入を行うためにも、高リスク患者を特定することが重要である。ADHDと自殺念慮との関連性は、精神疾患の併存ではなく、ADHDの中核症状である不注意症状が影響を及ぼしている可能性が示唆された」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)