精神疾患患者の認知機能と自殺リスクとの関連~メタ解析

うつ病や双極性障害などの治療可能な精神疾患は、自殺リスク因子の大部分を占めており、これらの患者は神経認知機能障害を伴うことが少なくない。カナダ・トロント大学のGia Han Le氏らは、統合失調症感情障害、双極性障害、うつ病患者における認知機能と自殺念慮/自殺企図との関連を調査した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2024年8月19日号の報告。
2024年4月までに公表された研究をPubMed、Ovid、Scopusのデータベースよりシステマティックに検索した。認知機能と自殺念慮/自殺企図との関連についてエフェクトサイズが報告された適格研究を、ランダム効果モデルを用いてプールした。
主な結果は以下のとおり。
・分析には、41件の研究を含めた。
・統合失調症感情障害およびうつ病患者において認知機能と自殺念慮/自殺企図との負の相関が認められた。
【統合失調症感情障害】自殺企図:Corr=−0.78(95%信頼区間[CI]:−1.00~0.98)、自殺念慮:Corr=−0.06(95%CI:−0.85~0.82)
【うつ病】自殺企図:Corr=−0.227(95%CI:−0.419~−0.017)、自殺念慮:Corr=−0.14(95%CI:−0.33~0.06)
・双極性障害の結果はまちまちであり、自殺企図と全般実行機能との間に有意な正の相関が認められ(Corr=0.08、95%CI:0.01~0.15)、感情抑制と負の相関が認められた。
・処理速度、注意力、学習、記憶については、診断横断的にさまざまな結果がみられた。
・本研究の限界として、サンプル構成や認知機能測定にばらつきがある点、個々の人口統計および併存疾患に関する情報を用いていない点が挙げられる。
著者らは「認知機能と自殺傾向との間に、診断横断的な関連性が認められた。とくに報酬機能における認知機能障害の相互作用が、精神疾患患者の自殺傾向の根底にある可能性が示唆された。また、衝動制御、計画、作業記憶の認知機能障害が、自傷行為や自殺に影響を及ぼしている可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)
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