COVID-19前後のベンゾジアゼピン受容体関連精神疾患とOTC関連精神疾患の比較

提供元:ケアネット

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公開日:2024/05/24

 

 北九州市立精神保健福祉センターの宇佐美 貴士氏らは、2018年および2022年に実施した「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」のデータに基づき、COVID-19前後でのベンゾジアゼピン受容体アゴニスト(BZRA)または市販薬(OTC)の乱用患者における臨床的特徴の変化を調査した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年4月15日号の報告。

 2つの調査のデータベースより、薬物乱用の主薬としてBZRAまたはOTCを使用した患者のデータを収集した。人口動態変数、教育、雇用、犯罪歴、前年の薬物使用、精神医学的診断、乱用した薬物の種類について、比較を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・薬物乱用の主薬としてBZRAを使用した患者は2018年で446例、2022年で435例、OTCを使用した患者は、2018年で155例、2022年で273例であった。
・BZRA乱用者を比較すると、2022年では、前年の薬物使用は減少しており、他疾患(ICD-10のF3、F4)の併存率が増加していた。
・2018、2022年ともに最も多く使用されていた薬剤は、エチゾラム、フルニトラゼパム、トリアゾラム、ゾルピデムであり、2022年にはゾルピデムの増加、トリアゾラムの減少がみられた。
・OTC乱用者を比較すると、2022年には女性および若年患者の割合が高いことが明らかとなった。
・2022年には、F3およびF9の疾患併存率およびデキストロメトルファン製品の有意な増加が観察されたが、2018、2022年ともにコデイン製品が多くを占めていた。

 著者らは「COVID-19パンデミック前後を比較すると、BZRAおよびOTC乱用者のいずれにおいても、複雑な病態が認められ、オーダーメイド治療の必要性が示唆された。若年層におけるOTC乱用は、とくに女性で顕著であり、デキストロメトルファンを含むOTCの薬物乱用が驚くほど増加していることが明らかとなった」としている。

(鷹野 敦夫)