転移膵がん1次療法、ゲムシタビン+nab-パクリタキセルが最適(JCOG1611、GENERATE)/ESMO2023

提供元:ケアネット

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公開日:2023/10/31

 

 2023年のASCO-GIで発表されたNAPOLI-3試験において、転移のある膵がんの1次療法として、ナノリポソーム型イリノテカンを使ったNALIRIFOX療法の、ゲムシタビン+nab-パクリタキセル(GnP)療法に対する有意な改善が報告された。しかし、現在ではGnP療法とmFOLFIRINOX療法が同等の推奨とされており、さらにS-IROX療法(S-1、イリノテカン、オキサリプラチン)も第I相試験で高い奏効率が報告されている。これら3レジメンの有効性と安全性を直接比較することを目的とした第II/III相JCOG1611試験の中間解析結果を、国立がん研究センター中央病院の大場 彬博氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。

・対象:切除不能転移膵がん、PS0~1
・試験群:
【GnP群】:nab-パクリタキセル(125mg/m2)、ゲムシタビン(1,000mg/m2)を4週ごと1、8、15日目に投与
【mFOLFIRINOX群】:オキサリプラチン85mg/m2、イリノテカン150mg/m2、l-ロイコボリン200mg/m2、フルオロウラシル2,400mg/m2を2週ごと、1~3日目に投与
【S-IROX群】:オキサリプラチン85mg/m2、イリノテカン150mg/m2、S-1 80mg/m2/日を2週ごと、1~7日目に投与
・評価項目:
[主要評価項目]全生存期間(OS)
[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・2019年4月~2023年3月に国内45施設から527例が登録され、GnP群(176例)、mFOLFIRINOX群(175例)、S-IROX群(176例)に1対1対1で割り付けられた。
・OS中央値はGnP群17.1ヵ月、mFOLFIRINOX群14.0ヵ月(ハザード比[HR]:1.31、95%信頼区間[CI]:0.97~1.77)、S-IROX群13.6ヵ月(HR:1.35、95%CI:1.00~1.82)であった。
・PFSはGnP群6.7ヵ月、mFOLFIRINOX群5.8ヵ月(HR:1.15、95%CI:0.91~1.45)、S-IROX群6.7ヵ月(HR:1.07、95%CI:0.84~1.35)であった。
・ORRはGnP群35.4%、mFOLFIRINOX群32.4%、S-IROX群42.4%であった。
・Grade3以上の有害事象(TEAE)で多かったものは、好中球減少症でGnP群60%、mFOLFIRINOX群52%、S-IROX群39%で発現した。血液関連以外のTRAEである食欲不振(5%対23%対28%)、下痢(1%対9%対23%)は、GnP群よりもmFOLFIRINOX群、S-IROX群で多く発現した。

 大場氏は「最終解析における優越性達成予測確率はmFOLFIRINOX群0.73%、S-IROX群0.48%とGnP群を上回る可能性がほとんどないため、本試験は中止となった。結果として、GnP療法が、mFOLFIRINOX療法やS-IROX療法と比較して、転移・再発膵がん患者の1次治療として推奨される」と結論付けた。

(ケアネット 杉崎 真名)

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