日本における睡眠薬の使用パターン~レセプトデータ分析

提供元:ケアネット

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公開日:2023/06/05

 

 不眠症の最適な治療法に関するコンセンサスは、限られている。近年、オレキシン受容体拮抗薬の導入により、利用可能な治療選択肢が増加してきたが、日本における睡眠薬使用パターンを包括的に評価した報告は、行われていなかった。MSDの奥田 尚紀氏らは、日本の不眠症治療における睡眠薬のリアルワールドでの使用パターンを調査するため、レセプトデータベースの分析を行った。その結果、日本における睡眠薬の新規使用患者および長期使用患者では、明確な使用パターンおよび傾向が認められた。著者らは、睡眠薬のリスクとベネフィットに関するエビデンスを蓄積し、不眠症に対する治療選択肢をさらに理解することは、リアルワールドにおいて睡眠薬を使用する医師にとって有益であろうとしている。BMC Psychiatry誌2023年4月20日号の報告。

 2009年4月1日~2020年3月31日、1種類以上の睡眠薬を使用した外来不眠症患者(20~75歳未満)をJMDC Claims Databaseに12ヵ月以上継続的に登録された患者より抽出した。対象患者は、睡眠薬の新規使用患者または長期使用患者に分類した。長期使用患者の適宜は、同様の作用機序を有する睡眠薬を180日以上使用した場合とした。2010~19年の睡眠薬使用の傾向および2018~19年の睡眠薬使用パターンを分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・分析対象は、睡眠薬の新規使用患者13万177例および長期使用患者9万1,215例。
・新規使用患者の多く(97.1~97.9%)は、1年当たり1つの作用機序を有する睡眠薬が使用されていた。
・2010年では、新規使用患者の94.0%に対しGABAA受容体作動薬(ベンゾジアゼピン[BZD]またはZ薬)が使用されていた。
・BZD使用は、2010年の54.8%から2019年の30.5%に減少がみられたが、Z薬使用は約40%で安定していた。
・メラトニン受容体作動薬使用は、3.2%から6.3%へ、わずかな増加がみられた。
・オレキシン受容体拮抗薬使用は、0%から20.2%に増加していた。
・長期使用患者におけるBZD単剤使用は、2010年の68.3%から2019年の49.7%に減少がみられた。
・オレキシン受容体拮抗薬使用は、新規使用患者と比較し、長期使用患者で低かった(2010年:0%、2019年:4.3%)。
・2018~19年のデータ分析では、新規使用患者よりも長期使用患者において、2つ以上の異なる作用機序を有する睡眠薬の使用頻度が高かった(2.8% vs.18.2%)。
・年齢または性別により分類した精神疾患の併存に応じた分析では、併存疾患を有する患者において、高齢者(新規および長期使用患者)および男性(新規使用患者)患者のBZD使用頻度が高かった。

(鷹野 敦夫)