動脈硬化リスクが上昇しやすい睡眠の取り方

提供元:ケアネット

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公開日:2023/03/13

 

 睡眠不足や不規則な睡眠というのは心血管疾患や2型糖尿病などの発症に関連しているが、アテローム性動脈硬化との関連性についてはあまり知られていない。そこで、米国・ヴァンダービルト大学のKelsie M. Full氏らは睡眠時間や就寝タイミングとアテローム性動脈硬化との関連性を調査し、45歳以上の場合に睡眠不足や不規則な睡眠であるとアテローム性動脈硬化の発症リスクを高めることを示唆した。Journal of the American Heart Association誌2023年2月21日号掲載の報告。

 本研究はコミュニティベースの多民族研究(MESA:Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)で、睡眠時間や睡眠の規則性について、アクティグラフィ(活動量測定検査)を7日間手首に装着した記録を評価し、無症候性のアテローム性動脈硬化との関連性を横断的に調査した。
※腕時計型の加速度センサーで、腕や足首に装着することで活動/休止リズムサイクルを記録するもの。睡眠/覚醒アルゴリズムを記録できる。

 本研究では、2010~13年に記録された2,032例(平均年齢±標準偏差[SD]:68.6±9.2歳[範囲:45~84歳]、女性:53.6%)のデータを用いた。評価項目に用いたマーカーは、冠動脈カルシウム、頸動脈プラークの有無、頸動脈内膜-中膜の厚さ、および足首-上腕指数であった。睡眠の規則性は睡眠時間と就寝タイミングで、個々の7日分のSDを定量化した。解析には相対リスク回帰モデルを使用し、有病率と95%信頼区間[CI]を計算した。なお、解析モデルは人口統計、心血管疾患の危険因子、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、睡眠時間、中途覚醒など、睡眠特性に合わせ客観的に評価・調整した。

 主な結果は以下のとおり。

・全体として、7日間を通してさまざまな睡眠を取った(たとえば、ある夜は睡眠時間が短く、ある夜は睡眠時間が長かった)参加者は、毎晩ほぼ同じ睡眠時間だった参加者よりも、アテローム性動脈硬化を発症する可能性が高かった。
・参加者の約38%では睡眠時間が90分以上変化し、18%では120分以上も変化していた。
・睡眠が不規則な人の特徴は、白人以外の人種では「現喫煙者の可能性が高い」「平均年収が低い」「勤務がシフト制もしくは無職の可能性が高い」「BMIが高い」傾向であった。
・調整後、より規則的な睡眠時間(SD≦60分)の参加者と比較したところ、睡眠時間の不規則性が大きい(SD>120分)参加者は、冠動脈カルシウム負荷が高く(SD>300、有病率:1.33、95%[CI]:1.03~1.71) 、足首上腕指数が異常値であった(SD<0.9、有病率:1.75、95%[CI]:1.03~2.95)。
・より規則的な就寝タイミングの参加者(SD≦30分)と比較したところ、就寝時間が不規則な参加者(SD>90分)は、冠動脈のカルシウム負荷が高い可能性が強かった (有病率:1.39、95%[CI]:1.07~1.82)。
・関連性は、心血管疾患の危険因子、平均睡眠時間、閉塞性睡眠時無呼吸、中途覚醒を調整後も持続した。
・睡眠の不規則性、とくに睡眠時間の長さのばらつきは、アテローム性動脈硬化のいくつかの無症候性マーカーと関連していた。

(ケアネット 土井 舞子)