閉経後HR+早期乳がん、レトロゾール追加投与でベネフィットが得られる患者は?(NSABP B-42)/ASCO2021

提供元:ケアネット

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公開日:2021/06/21

 

 閉経後のホルモン(HR)陽性早期乳がん患者において、術後内分泌療法としてのレトロゾール5年間追加投与は、MammaPrintによるゲノムリスクが低リスクの患者では有意なベネフィットが確認されたが、高リスクの患者では有意差を得られなかった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で、米国・UPMC Hillman Cancer CenterのPriya Rastogi氏が、第III相NSABP B-42試験の追加解析結果を報告した。

 本試験は、術後内分泌療法を受けた閉経後のHR陽性早期乳がん患者を対象に、レトロゾール5年間追加投与の有効性を検討する無作為化二重盲検プラセボ対照試験。2019年のサン・アントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で、主要評価項目の無病生存期間(DFS)は、レトロゾール追加投与群で有意に延長したことが報告された(ハザード比[HR]:0.85、p=0.01)。OSに有意差はみられなかったが、乳がん無発症期間(BCFI)のHRは0.75、p=0.003、無作為化から遠隔転移までの期間(DR)のHRは0.72、p=0.01とともに改善した。今回の解析では、レトロゾール5年間追加投与によるベネフィットを受ける患者の選択における、70遺伝子シグニチャー検査(MammaPrint)の有用性が検討された。

・対象:術後内分泌療法としてアロマターゼ阻害薬(AI)を5年間、または3年以内のタモキシフェン投与後にAIを計5年間投与した閉経後のHR陽性早期乳がん患者
・試験群:レトロゾールを5年間追加投与(ELT群)
・対照群:プラセボを5年間投与(プラセボ群)
・評価項目:
[主要評価項目]無作為化から遠隔転移までの期間(DR)
[副次評価項目]無病生存期間(DFS)、乳がん無発症期間(BCFI)

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフは2020年4月30日、追跡期間中央値は 10.4年であった。
・本試験の全適格患者は3,903例、うちMammaPrintの結果が得られ本解析の対象とされたのは1,866例(MPコホート、N0:56.4%、AIのみ:61.1%、HER2-:79.3%)。37.8%がMammaPrint 評価で高リスク(MP-H)、62.2%が低リスク(MP-L)、MP-Lのうち13.5%が超低リスク(MP-UL)、48.7%がMP-LNUL(MP-LだがMP-ULではない)だった。
・レトロゾールの追加効果は、全体集団と比較してMPコホートでより顕著であった。
・主要評価項目のDRは、MP-LでELT群の統計的に有意なベネフィットがみられたが(HR:0.43、95%信頼区間[CI]:0.25~0.74、p=0.002)、MP-Hではみられなかった(HR:0.65、95%CI:0.34~1.24、p=0.19、相互作用のp=0.38)。
・副次評価項目のDFSにおいても、MP-L(HR:0.67、95%CI:0.52~0.85、p<0.001)でELT群の統計的に有意なベネフィットがみられたが、MP-Hではみられなかった(HR:1.10、95%CI:0.82~1.47、p=0.55、相互作用のp=0.015)。
・BCFIでも同様の傾向が観察された。MP-L(HR:0.51、95%CI:0.35~0.74、p<0.001)、MP-H(HR:1.15、95%CI:0.74~1.79、p=0.53、相互作用のp=0.006)。
・MP-Lのサブカテゴリ別にみると、MP-LNULではDR、DFS、BCFIすべてでELT群の統計的に有意なベネフィットがみられたが、MP-ULではみられなかった。ただし、症例数が少ないため検出力が不足している可能性がある。

 演者のRastogi氏は、本結果は追加の内分泌療法を実施する患者選択におけるMammaPrintの臨床的有用性を示したと結論付け、臨床病理学的特徴と組み合わせた解析を行うことで、より最適な患者選択が可能になるのではないかと展望を示した。

(ケアネット 遊佐 なつみ)

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