新型コロナウイルス、皮膚表面での生存期間はインフルの5倍

提供元:ケアネット

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公開日:2020/10/15

 

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を巡っては、空気中や物質表面上での生存期間がこれまでの研究で明らかになっているが、ヒトの皮膚表面における生存期間は不明であった。今回、京都府立医科大学の廣瀬 亮平氏ら研究チームが、法医解剖献体から採取した皮膚上におけるウイルスの安定性を検証したところ、SARS-CoV-2は皮膚表面上で9時間程度生存し、1.8時間程度で不活化されるインフルエンザウイルスに比べ大幅に生存時間が長いことがわかった。本研究をまとめた論文は、Clinical Infectious Diseases誌2020年10月3日号に掲載された。

 本研究では、十分に解明されていないSARS-CoV-2の危険性に鑑み、生体皮膚の代替として法医解剖献体から採取した皮膚を用いた病原体安定性評価モデルを構築。モデルの再現性を確認するため、比較的危険性の低いインフルエンザA型ウイルス(IAV:PR8株)を被験者の皮膚と皮膚モデルそれぞれの表面上において、安定性を評価・比較したところ、皮膚上のIAVはいずれも60分程度で完全に不活化され、各経過時間におけるモデル皮膚表面上で生存するウイルス量は、被験者皮膚上で生存するウイルス量とおおむね一致していた。
 この再現性を基に、SARS-CoV-2の安定性を皮膚モデルで検証したところ、SARS-CoV-2の生存期間はIAVよりも有意に長かった(9.04時間、95%信頼区間[CI]:7.96~10.2時間vs. 1.82時間、95%CI:1.65~2.00時間)。また、本研究では皮膚上のSARS-CoV-2とIAVに対する80%エタノールの消毒効果についても検証。その結果、15秒間のエタノール暴露によって、皮膚上のいずれのウイルスも完全に不活化することが確認された。

 著者らは、本研究によりヒト皮膚上でインフルエンザウイルスに比べ大幅に生存時間が長いというSARS-CoV-2の特性が明らかになったと同時に、エタノール消毒薬を使用した手指衛生は、本来9時間程度続くSARS-CoV-2の接触伝播のリスクを速やかに低下させることが可能で、感染制御上きわめて効果的であることが示されたと述べている。

(ケアネット 鄭 優子)