セルメチニブが希少疾病用医薬品に指定/アストラゼネカ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2020/07/14

 

 アストラゼネカ株式会社は、セルメチニブ硫酸塩(以下「セルメチニブ」という)が希少遺伝性疾患の神経線維腫症1型(以下「NF1」という)の治療薬として、わが国で希少疾病用医薬品指定を取得したと発表した。
*希少疾病用医薬品指定とは、患者数が5万人未満で、アンメットメディカルニーズが高い疾病の治療を目的とした医薬品に対して行われている指定。通常の保険適用とは異なる。

幼児期から始まり、平均余命も削る希少疾病

 NF1は3,000~4,000人に1人が罹患する遺伝性疾患。NF1遺伝子の自発的あるいは遺伝的変異により発症し、皮膚あるいは皮下の柔らかい塊(皮膚の神経線維腫)、皮膚色素沈着(カフェ・オ・レ斑)、および患者の30~50%にみられる叢状神経線維腫(以下「PN」という)を含む多くの症状を伴う。これらのPNは、外見の変化、運動機能障害、疼痛、気道機能不全、視覚障害、腸や膀胱の機能不全および変形などの病的状態を引き起こす可能性がある。PNは幼児期に始まり、重症度は多岐にわたる。また、この疾患により、平均余命が8~15年短縮する可能性もある。

がんの活性化を抑えるセルメチニブの特徴

 治療薬として期待されるセルメチニブは、同社とMSDが共同開発、商業化を進めている薬剤で、2020年4月に「症候性かつ手術不能なPNを有する2歳以上のNF1小児患者に対する治療薬」として米国では承認されている。また、PNを有するNF1を適応症とする承認申請が欧州医薬品庁によって受理・審査中であり、その他の地域でも承認申請を検討している。なお本剤はわが国では現在未承認。

 同薬剤は分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MEK1/2阻害剤)である。MEK1/2タンパクは、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)経路の上流調節因子で、MEKとERKはともに、RASによって調節されるRAF-MEK-ERK経路の重要な構成要素であり、さまざまな種類のがんで活性化されることが多い。

単剤投与で66%の客観的奏効率

 米国国立がん研究所の米国癌治療評価プログラムによるSPRINT試験(手術不能なPNを有するNF1小児患者を対象にセルメチニブ単剤療法を行い、客観的奏効率や患者報告アウトカムおよび機能転機への影響を評価するもの)の第I相および第II相のStratum1における客観的奏効率(ORR)は、セルメチニブ単剤を経口投与(1日2回)したPNを有するNF1の小児患者において66%(50例中33例、部分奏効を含む)を示した。ORRは、完全奏効または20%以上の腫瘍縮小を評価基準とする部分奏効が確認された患者数から算出している。

 同社では、「NF1は、ほとんどの国でその治療選択肢は限られており、今回の指定は、NF1に対する初の治療薬を日本の小児患者に提供できる重要な一歩となる」と今後の発展に期待を寄せている。

(ケアネット 稲川 進)