尿酸値を本気で下げる方法とは?

提供元:ケアネット

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公開日:2020/01/17

 

高尿酸血症の治療には食生活を中心とした生活習慣改善が欠かせないが、無症状の場合も多く、継続的に取り組むことは容易ではない。患者を“本気にさせる”尿酸値を下げる方法や、乳酸菌による尿酸値の上昇抑制効果とは? 2019年11月29日、「疾病リスクマーカーとして注目すべき尿酸値に関する新知見」と題したメディアセミナー(主催:明治)が開催された。久留 一郎氏(鳥取大学大学院医学系研究科)、野口 緑氏(大阪大学大学院医学系研究科)、藏城 雅文氏(大阪市立大学大学院医学研究科)が登壇し、高尿酸値と疾病リスクの関係や患者指導のポイント、生活習慣改善にまつわる新旧のエビデンスについて講演した。

高尿酸値で怖いのは痛風より合併症、尿酸値を下げないと全身で臓器障害を引き起こす

 尿酸値が7.0mg/dLを超える高尿酸血症患者のうち、痛風発作を起こすのは約1割。残り9割は無症候性だが、痛風以上に心配すべきは合併症で、高尿酸値は心血管代謝疾患発症のリスク因子となる。高尿酸値と各疾患の関連は数多く報告されているが、合併症のない日本人の無症候性高尿酸血症患者を対象とした5年間のコホート研究では、男女問わず高血圧、脂質異常症、CKDの発症リスクと関連したほか、男性の肥満、女性の糖尿病の発症リスクと関連したことが明らかになっている1)。久留氏は「症状のない場合でも、5年間でこれらの疾患発症リスクが増加してしまうことは見逃せない」と指摘した。

 同時に、尿酸はヒトにとって必要不可欠な物質でもある。血中に存在し、生理的濃度(5.0mg/dL程度)で血管内皮機能の維持に働いているとされ、2.0mg/dL以下の低尿酸血症の状態は避けなければならない。しかし、尿酸が血中に溶けることができる限界濃度は7.0mg/dLで、それ以上に尿酸値が高まると関節だけでなく、全身の細胞内に取り込まれて臓器障害を引き起こす。その機序としては、細胞内に蓄積した尿酸により活性酸素が産生されるルート、体内での尿酸合成に伴いキサンチンオキシダーゼ(XO)が活性化されて活性酸素が増加するルートの2つが考えられるという。


患者を本気で尿酸値を下げる気にさせる“具体的で実感が湧く”情報とは

 続いて登壇した野口氏は、尼崎市に保健師として在任中、独自の指導方法などによって毎年数例あった職員の脳・心血管疾患での在職死亡を“0”にした経験を持つ。尿酸値を下げる方法として、健診結果の数値を見せて、ただ「減らしてください」と言っても行動にはつながりにくく、いかに具体的なイメージを持ってもらうかが重要と強調した。

 たとえば高尿酸血症の場合は、「痛風発作につながる可能性がある」と言われても患者は想像がつかないことが多い。しかし「血管をどう傷つけるか」を説明すると反応があるといい、そもそも尿酸はどんな物質で、体内のどこをどうめぐり、最終的に痛みにつながる可能性があることを図示した指導用資料を活用しながら、「何が原因となって体内でどうダブついてしまうのか」を説明するという。

 米国でスタチン服用経験のある1万例以上を対象に、尿酸値を下げる治療を中断しないための条件を調査した研究では、「食事や運動の相談」「web情報」といった方法論の伝達だけでは継続者は少なく、「治療の説明に対する満足」「治療コントロール目標の説明に対する同意」「心臓や動脈に対する影響の説明」といった項目で、中断が継続を上回っていた2)


尿酸値上昇にサウナ+ビールはてきめん、尿値値を下げるには豆乳よりも牛乳?

 尿酸値を下げるための具体的な生活指導の方法としては、高プリン食(肉類・魚介類など)を極力控えること、十分な水分摂取(尿量2,000mL/日以上)、アルコール(特にビール)の制限、軽い有酸素運動などが推奨されている3)。藏城氏は、関連のエビデンスをメカニズムと併せていくつか紹介。自転車エルゴメーターと尿酸値の関連を調べた研究では、実施時間が長くなるほど尿酸値が上昇し4)、激しい運動は尿酸値を下げるのとは真逆の効果をもたらすと説明した。アルコール摂取に関しては、低プリン発砲酒でも尿酸値は上昇するものの、その幅は通常のものよりも低く抑えられる5)、サウナ+ビールの組み合わせは脱水とプリン体摂取とにより大きく尿酸値が上昇する6)といったデータが紹介された。

 逆に摂取が推奨されるものの1つが乳製品で、痛風の発症抑制に有効であることが報告されている7)。手軽に摂取できる牛乳は有用だが、豆乳では血中尿酸値を下げる効果が確認されなかったという8)。同氏はこの背景として、牛乳にはプリン体が含まれないが、豆乳には含まれることが影響しているのではないかと話した。


乳酸菌が腸内でプリン体を栄養源として利用か

 最後に藏城氏は、乳酸菌による尿酸値の上昇抑制効果について、新たなデータを紹介。プリン体の吸収抑制効果に着目して選定された乳酸菌(Lactobaccillus gasseri PA-3;以下PA-3株)を含むヨーグルトと、通常のヨーグルトの抑制効果を比較した結果について解説した。20歳以上の健康な男性14人対象のプラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験の結果、ともに1日1パック(112g)のヨーグルトを摂取した場合、食後(プリン体摂取後)30分、60分時において、PA-3株を含むヨーグルトが、通常のヨーグルトと比較して尿酸値の上昇量を有意に抑制した9)

 同氏は、同じ乳製品でも、牛乳と乳酸菌による尿酸値抑制メカニズムが異なる可能性を指摘。牛乳の場合は、摂取後の尿中の尿酸排泄量が増加するが、PA-3株では尿中排泄量の変化はみられなかった。しかし血清尿酸値は抑制されていることから、「乳酸菌は消化管からのプリン体吸収抑制に寄与し、腸管内でプリン体を取り込み、増殖のための栄養源として利用している可能性がある」と話した。


■参考
1)Kuwabara M, et al. Hypertension. 2017 Jun;69:1036-1044.
2)Cohen JD, et al. J Clin Lipidol. 2012 May-Jun;6:208-15.
3)日本痛風・核酸代謝学会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版.診断と治療者;2018.
4)Yamamoto T, et al. Horm Metab Res. 1994 Aug;26:389-91.
5)Yamamoto T, et al. Metabolism. 2002 Oct;51:1317-23.
6)Yamamoto T, et al. Metabolism. 2004 Jun;53:772-6.
7)Choi HK, et al. N Engl J Med. 2004 Mar 11;350:1093-103.
8)Dalbeth N, et al. Ann Rheum Dis. 2010 Sep;69:1677-82.
9)Kurajoh M, et al. Gout and Nucleic Acid Metabolism. 2018;42:31-40.

(ケアネット 遊佐 なつみ)