前立腺がんに対する重粒子線治療の有益性に関するエビデンス/Lancet Oncol

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2019/07/22

 

 前立腺がんに対する重粒子(炭素イオン)線治療の有益性に関するエビデンスが日本発で発信された。量子科学技術研究開発機構(NIRS)のOsama Mohamad氏らによる検討の結果、限局性前立腺がんに対する重粒子線治療は、光子線治療よりも2次がんリスクが低いと思われる所見が示されたという。これまでに、絶対数は少ないが光子線治療は手術を受けた患者よりも2次がんリスクが高いことが示されていた。重粒子線治療は、理論的には光子線治療よりも2次がんの誘発リスクは低いが、世界的にオファーが少なく、入手できるデータも1994年以降のものと限定的であり臨床研究が進んでいなかった。著者は「結果の裏付けには長期に追跡した前向き評価が必要であるが、今回示されたデータは、通常治療後の全生存期間(OS)が長期と予想される患者、反対に不良なアウトカムを有する患者に対し、広く重粒子線治療を適用することを支持するものである」と述べている。Lancet Oncology誌2019年5月号掲載の報告。

重粒子線治療は光子線治療や手術よりも2次がんのリスクが有意に低い

 研究グループは、後ろ向き傾向スコア重み付けコホート研究にて、限局性前立腺がん患者の重粒子線治療後の2次がんリスクについて、光子線療法後または手術後患者と比較する検討を行った。

 日本のNIRSにて、1995年6月27日~2012年7月10日に前立腺がんで重粒子線治療を受けた患者の記録をレビューすると共に、1994年1月1日~2012年12月31日に前立腺がんの診断および治療を受けた大阪府がん登録の患者の記録を抽出して評価した。組織学的に限局性前立腺がんと確認されており、少なくとも3ヵ月間フォローアップを受けていた患者(年齢制限なし)を適格とした。転移、リンパ節転移陽性、浸潤転移(T4ステージ)を認める患者、悪性腫瘍の既往がある、または同時性がんの患者、放射線療法または化学療法を受けたことがある患者は除外した。

 多変量解析にて、重粒子線治療後の2次がんの予測因子を推定し、傾向スコア逆重み付け法にて後ろ向きに、限局性前立腺がん患者における重粒子線治療vs.光子線治療vs.手術後の2次がん発生率を比較した。

 前立腺がんで重粒子線治療を受けた患者の記録をレビューした主な結果は以下のとおり。

・NIRSで前立腺がんの重粒子線治療を受けた患者は1,580例であった。そのうち1,455例(92%)が試験の適格条件を満たした。
・大阪府がん登録では前立腺がん患者3万8,594例が特定された。そのうち光子線療法を受けた1,983例(5%)と、手術を受けた5,948例(15%)を解析に包含した。
・追跡期間中央値は、重粒子線治療群7.9年(5.9~10.0)、光子線治療群5.7年(4.5~6.4)、手術群6.0年(5.0~8.6)であった。
・重粒子線治療群で2次がんが診断されたのは234例であった。一部の患者は複数の腫瘍を呈した。
・多変量解析の結果、重粒子線治療群の2次がんの高リスク因子と関連していたのは、年齢(71~75歳vs.60歳以下のp=0.0021、75歳超vs.60歳以下のp=0.012)、喫煙(p=0.0005)であった。
・傾向スコア重み付け解析の結果、重粒子線治療群は光子線治療群よりも2次がんのリスクが有意に低かった(HR:0.81、95%CI:0.66~0.99、p=0.038)。また、手術群と比べても有意に低かった(0.80、95%CI:0.68~0.95、p=0.0088)。
・一方で、光子線治療群は手術群よりも、2次がんのリスクが有意に高かった(HR:1.18、95%CI:1.02~1.36、p=0.029)。

(ケアネット)