降圧治療のベネフィットがある血圧は何mmHg以上か~74試験のメタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2017/11/20

 

 高血圧は、死亡および心血管疾患(CVD)の最も重要な危険因子だが、降圧治療の最適なカットオフが議論されている。今回、スウェーデン・ウメオ大学のMattias Brunström氏らのシステマティックレビューとメタ解析により、1次予防における降圧治療は、ベースラインのSBPが140mmHg以上であれば、死亡リスクとCVDリスクの低下に関連することがわかった。また、ベースラインのSBPが低い場合の降圧治療は、1次予防におけるベネフィットはないが、CHD患者では付加的な保護効果がある可能性が示唆された。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2017年11月13日号に掲載。

 本研究では、ベースラインの血圧レベルごとに、降圧治療と死亡およびCVDとの関連を検討した。著者らは、PubMed、Cochrane Database of Systematic Reviews、Database of Abstracts of Reviews of Effectから過去のシステマティックレビューを同定し、これらの引用文献から無作為化臨床試験を検索した。また、2017年2月にPubMedとCochrane Central Register for Controlled Trialsで、2015年11月1日以降に発表された無作為化臨床試験を検索した。少なくとも1,000患者年のフォローアップ、降圧薬とプラセボ、もしくは異なる血圧目標を比較した無作為化臨床試験を選択した。また、著者らは元文献からデータを抽出し、Cochrane Collaborations評価ツールを使用してバイアスリスクを評価した。相対リスク(RR)は、Knapp-Hartung法で補正されたランダム効果メタ解析により統合した。事前に規定したアウトカムは、全死亡、心血管死亡、主要心血管イベント、冠動脈疾患(CHD)、脳卒中、心不全、末期腎不全であった。

 主な結果は以下のとおり。

・74試験がメタ解析に組み入れられ、参加者は30万6,273例(女性39.9%、男性60.1%、平均年齢63.6歳)、フォローアップは120万人年であった。

・1次予防における降圧治療と主要心血管イベントの関連は、ベースラインの収縮期血圧(SBP)に依存していた。
- ベースラインのSBPが160mmHg以上
死亡率の減少(RR:0.93、95%CI:0.87~1.00)、主要心血管イベントの大幅な減少(RR:0.78、95%CI:0.70~0.87)と関連していた。
- ベースラインのSBPが140~159mmHg
死亡率との関連は160mmHg以上の場合と同様(RR:0.87、95%CI:0.75~1.00)であったが、主要心血管イベントとの関連はあまり強くなかった(RR:0.88、95%CI:0.80~0.96)。
- ベースラインのSBPが140mmHg未満
死亡率(RR:0.98、95%CI:0.90~1.06)、主要心血管イベント(RR:0.97、95%CI:0.90~1.04)とも関連はみられなかった。

・CHD既往例でベースラインの平均SBPが138mmHgであった試験では、主要心血管イベントリスクの低下と関連していた(RR:0.90、95%CI:0.84~0.97)が、生存率とは関連していなかった(RR:0.98、95%CI:0.89~1.07)。

(ケアネット 金沢 浩子)