足動脈血管形成術、中等度CLI(重症下肢虚血)に有効性

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2016/03/28

 

 2016年3月19日、日本循環器学会学術集会「Late Breaking Clinical Trials/Cohort Studies III」が行われ、宮崎市郡医師会病院 仲間 達也氏が、足首以下にも病変を持つ重症下肢虚血(以下CLI:critical limb ischemia)患者に対する血行再建の臨床的意義を評価した多施設共同試験RENDEZVOUSレジストリについて報告した。

 重症下肢虚血患者の救肢において血行再建は不可欠である。従来のバイパス手術に匹敵する救肢率が報告されている血管内治療(EVT)への注目度が増している。しかしながら、EVTの創傷治癒率には依然として課題が残る。

 そのようななか、足首以下までの血行再建(以下PAA:pedal artery angioplasty)により、創傷治癒率の向上と治癒までの期間の短縮を示した単施設研究が、昨年報告されている1)。今回の研究の目的は、PAAの追加がCLI患者の予後にどう影響するのかを多施設研究で評価することである。

 試験は、日本全国の5施設によるデータベースから後ろ向き解析で行われた。試験対象は、2012年1月~14年6月に登録された257患者、257肢。患者はRutherford4を除くCLIで、ひざ下と足首以下に虚血性潰瘍または壊死を含む病変を有する。患者の半数が、車いす以下のADLであった。病変は、Rutherford分類5が78%、6が22%、感染肢が半数、小切断術またはデブリードマン施行も半数で行われており、重篤な状態であった。試験の主要評価項目は、EVT後12ヵ月の創傷治癒率と創傷治癒までの時間。副次的評価項目は救肢率、切断後生存期間、再血行再建回避率であった。また、創傷治癒率の独立危険因子を多変量で解析し、危険因子の数でリスク層別化を行い、どの患者に対してPAAを行うべきかを明らかにした。

 結果、主要評価項目である創傷治癒率は、PAA施行群で59.3%、非施行群では38.1%、とPAA施行群で有意に高かった。創傷治癒までの時間もPAA施行群で有意に短かった。副次的評価項目については統計学的な差は認められていない。

 創傷治癒遅延の危険因子は、車いす以下、テキサス分類2以上の深い潰瘍、透析施行。一方、PAAは治癒遅延陰性因子、すなわち治癒促進因子であった。

 上記危険因子の数により3段階で評価されたリスク層別化をみると、中等度リスク群(危険因子1~2個)では、PAA施行群の創傷治癒率59.3%に対し、非施行群では33.9%と、有意にPAA施行群の創傷治癒率が高かった。低リスク群(危険因子なし)では、PAA施行群に高い傾向があったが、統計的有意差は認められなかった。高リスク群(危険因子3個)においても統計的有意差は認められなかった。

 仲間氏は「この試験から、積極的にPAAを行うことで、中等度リスクの患者のアウトカムの改善を期待できることが明らかになった。一方、低リスク群では、PAA非施行でも比較的良好な成績が得られ、PAAの意義は明らかではない。また、高リスク群では、障害が大きいことから血管内治療で介入できる範囲を超えている可能性が示唆された」と述べている。

参考文献
1)Nakama T, et al. J Endovasc Ther. 2016;23:83-91.

(ケアネット 細田 雅之)