耐性克服に再生検を!~肺がん治療~

提供元:ケアネット

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公開日:2016/02/03

 

 2016年1月21日都内にて、「肺がん治療におけるアンメットメディカルニーズ」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。演者である中川 和彦氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科 教授)は、第3世代EGFR-TKIの登場に伴う再生検の重要性に触れ、「耐性変異を調べることが、最終的に患者さんの利益につながる」と述べた。

 以下、セミナーの内容を記載する。

適切なバイオマーカーによる患者選択を
 肺がん治療は劇的な進歩を遂げているが、依然アンメットニーズは高い。だからこそ、「希望の光」となるのが臨床試験だ。肺がん治療に影響を与えた代表的試験として、ゲフィチニブのIPASS試験1)がある。EGFR遺伝子変異の有無による効果の違いを実証した本試験は、適切なバイオマーカーで患者選択を行う有用性をわれわれに教えた。
 しかし、ゲフィチニブ等のEGFR-TKIが著効した症例も1年~1年半以内に再発が認められる。この「耐性獲得」は深刻なアンメットニーズである。

T790M変異の確認に不可欠な再生検
 EGFR-TKI耐性患者の約6割がT790M変異を有する2)。今後、T790M変異を標的とした、第3世代EGFR-TKIが市場に登場すれば、同時にEGFR-TKI耐性獲得時の再生検も重要性が増すことになる。T790M変異を確認するには再生検は不可欠だ。
 しかし、気管支内視鏡検査をはじめとした検体採取は患者負担が大きい、また脳転移や骨転移での再発例では困難、との指摘もある。そこで現在、血液検体からT790Mを測定する検査の開発が進められている。血液検体、その後に組織診断という流れを作るべく、臨床試験が進行中であり、今後に期待したい。

2度目の遺伝子検査が、患者さんのメリットに
 EGFRに限らず、肺がんのドライバー遺伝子は多岐にわたる。ALK、ROS1、RET、BRAF等があり、それぞれを標的とした新薬が開発段階にある。もはや問題となる遺伝子を探索し、適切な薬を選択する時代である。当然、薬剤費や手間の問題が浮上するが、たとえば、近畿大学ではDNAとRNAを一度に抽出し、遺伝子変異を探索している。
 今後、第3世代EGFR-TKIを始めとする各種新薬の登場に伴い、再生検の重要性は増すだろう。再生検で耐性変異を調べることは、最終的に患者さんの利益につながると期待している。

(ケアネット 佐藤 寿美)