アレルギー性鼻炎を改善へ、世界初の舌下錠登場

提供元:ケアネット

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公開日:2015/12/08

 

 シオノギ製薬株式会社は、11月26日都内にて、世界初の舌下錠タイプのダニアレルゲン免疫療法薬「アシテア」の発売を記念し、岡本 美孝氏(千葉大学大学院医学研究院 耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学 教授)を講師に迎え、「患者さんのQOL向上をサポートするアレルギー性鼻炎治療」をテーマにプレス向けの説明会を行った。

国民の4割が有病者
 アレルギー性鼻炎とは、「鼻粘膜のI型アレルギー疾患で、発作性反復性のくしゃみ、水性鼻漏、鼻閉を主徴とする」疾患である。疫学的実態に関して、アレルギー性鼻炎全体の日本国内での有病率は約4割と考えられている。ダニが原因の代表とされる通年性アレルギー鼻炎はとくに男性に多く、花粉症に代表される季節性アレルギー鼻炎は女性に多い。患者数は季節性アレルギーで近年増加傾向にある。
 現在、アレルギー性鼻炎の治療法として、「抗原回避」「薬物療法」「免疫(減感作)療法」「手術療法」「鼻処置」「患者とのコミュニケーション」がある。なかでも広く行われている「薬物療法」と「免疫(減感作)療法」に焦点を当て、解説がされた。
 ケミカルメディエーター遊離抑制薬や抗ヒスタミン薬、ステロイド薬などの薬物療法は、現在最も多く行われている治療であるが、これらは対症療法であり、アレルギー症状の治療という根本的な解決になっていない。その一方で、原因アレルゲンを皮下注射することで治療していくアレルゲン免疫療法(減感作療法)は、体質改善が図られ症状が軽快するものの、治療期間が2年以上と長期にわたり、途中離脱する患者の割合も多い。

薬物療法か、免疫療法か
 それでは、薬物療法と免疫療法のどちらの治療法が良いだろうか?
 アレルギー性鼻炎患者の長期経過を、千葉大学医学部附属病院 耳鼻科アレルギー外来で追跡調査した結果が報告された。
 小児通年性アレルギー鼻炎(n=55)において、薬物療法で改善以上が25%だったのに対し、減感作療法2年未満では69%、同療法2年以上は77%と減感作療法のほうが高い数値を示していた。また、成人通年性アレルギー性鼻炎(n=31)では、薬物療法で改善以上が40%だったのに対し、減感作療法2年以上は81%だったという。こうしたことからもアレルゲン免疫療法は、治療終了後も効果が長期間持続することが期待されているという。
 このように、アレルゲン免疫療法(減感作療法)のデメリットを払拭する薬剤が待ち望まれる中で、患者の利便性、非侵襲性、重篤な副作用の軽減を目指し、アシテアが開発された。

1日1回、2分で終了
 アシテアは、世界で初めてのダニアレルゲン舌下錠であり、次のような特徴を持つ。
 対象患者は、ダニアレルギー性鼻炎の成人および12歳以上の小児。禁忌は、病因アレルゲンがダニ抗原ではない患者、ダニエキスにショックの既往のある患者、重症の気管支喘息患者、悪性腫瘍などの全身性疾患のある患者である。また、過去にアレルゲンエキスでアレルギー症状を発現した患者、気管支喘息患者、高齢者、妊産婦(授乳中も含む)、非選択的β遮断薬服用中の患者は慎重投与となる。
 用法・用量は1日1回、1回投与量100単位から開始し、300単位まで増量できる。服用方法は、薬剤を舌下に入れ、そのまま溶解するまで唾液を飲み込む(約2分間)だけである。ただし、服用後5分間はうがい、飲食は控えなければならない。
 国内での第II/III相試験によると、投与1年後のアシテア300単位(n=315)とプラセボ(n=316)との比較で、平均調整鼻症状スコア(くしゃみ発作、鼻汁、鼻閉など)は、アシテア群の最小二乗平均が5.0に対し、プラセボ群が6.11と有意差が認められた。また、「軽度以上の改善」と評価した被験者割合は、アシテア群(244/306例)が79.7%だったのに対し、プラセボ群(200/310例)64.5%と、同じく有意差が認められた。

初回投与は医師の監視下で
 副作用はアシテア群で66.8%の報告があったのに対し、プラセボ群は18.6%であった。副作用の重症度は、軽度(98.1%)がほとんどを占め、アナフィラキシーショックのような高度なものは報告されなかった。主な副作用は、頻度順に口腔浮腫、咽喉刺激感、耳そう痒症、口腔そう痒症、口内炎などが挙げられた。副作用の発現時期は半数以上が投与開始後2週間以内であり、継続投与により発現頻度、程度は減弱していくという。そのため、副作用への注意として、初回投与時は約30分間、医師の監視下に置き十分な観察を行う。また、免疫療法では患者の離脱率が高いために、事前にメリット(長期の症状改善、自宅で服薬など)とデメリット(長い治療期間、副作用など)を患者によく説明することが、治療のポイントとなる。
 最後に「効果持続期間の検証や新たな副作用の出現など、臨床の場でさらに研究を進めるとともに、効果測定や予測バイオマーカーの開発などが待たれる」と今後の課題を述べ、レクチャーを終えた。

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(ケアネット 稲川 進)

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