今後の薬局・薬剤師の役割を議論:日本女性薬局経営者の会シンポジウム

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2015/11/06

 

 11月3日、東京都内にて日本女性薬局経営者の会設立記念シンポジウムが開催された。冒頭、会長の堀 美智子氏より「薬局の薬剤師は薬の数を数えて輪ゴムで留めているだけなのでは、などと思われているときだからこそ、患者の安心・安全を担保するために努力していることを社会にアピールしていく必要がある」という設立趣旨が説明された。

 基調講演では厚生労働省 医薬・生活衛生局総務課 医薬情報室長の田宮 憲一氏が「薬局・薬剤師の将来像について」をテーマに講演した。コストに合ったメリットを患者が実感できていない現状があることや、薬局の薬剤師業務が調剤に偏重していることなどの問題が挙げられた。これらの問題を解決するために、先月厚労省より発表された「患者のための薬局ビジョン」1)について触れ、今後、患者が医薬分業のメリットを実感できるよう取り組んでいくと述べた。薬局の機能は、いわゆる「門前薬局」から「かかりつけ薬局」へ、「調剤偏重」から「身近な相談窓口」への転換が求められているとし、それに伴い現在検討されている調剤報酬の抜本的な改革についても触れた。そして「2025年までにすべての薬局をかかりつけに」「2035年までに薬局の立地を地域へ」を目指すという具体的な目標を示した。

 後半のパネルディスカッションには、国立保健医療科学院 統括研究官の今井 博久氏や、健康保険組合連合会 副会長の白川 修二氏らが登壇し、「これからの薬局・薬剤師のあり方」について意見が交わされた。今井氏は、薬剤師不要論とも取れる声が一部の医師の間で見受けられる一方で、東京や大阪で実施した医師からのヒアリングでは、「多剤処方や不適切処方を改善するために薬剤師との協働が必要である」という意見が多数あったことを紹介し、「薬剤師にはチーム医療における専門的支援の役割を果たしてほしい」と期待を寄せた。また、白川氏からは、「分業は進めるべきだが、負担に見合う効果があるというエビデンスを示していく必要がある」との意見が出された。

 最後に堀氏は、薬の管理や剤形の検討など“今までの薬剤師業務”として知られていることを実施していくことはもちろんだが、“化学物質の専門家”である薬剤師が介入することで、処方薬でなくOTC薬で対応可能になるケースがあることや、特定保健用食品や機能性表示食品などの不適切な摂取による体調不良を未然に防ぐことができれば医療機関への受診が不要になることから、薬剤師は医療費削減にも貢献できると訴えた。そして、患者の訴えや観察からどんな薬が影響しているかを考え、より良い提案をするのが薬剤師の役割であり、そのような情報を医療関係者や患者、介護者らと共有し、連携していきたいと語った。

【参考】
1)厚生労働省. 患者のための薬局ビジョン. (参照 2015.11.05)

(ケアネット 後町陽子)