統合失調症患者の運動増進、どうしたら上手くいくか 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2015/10/13 統合失調症患者において、定期的な運動は身体的にも精神的にも良い影響を与える。しかし、先行研究における参加者の少なさや高い脱落率から示されるように、認識力、理解力、情動、意志力の障害が運動を計画および実行を困難にしている。ドイツ・コンスタンツ大学のPascal Sailer氏らは、心理対比と実行意図(Mental Contrasting and Implementation Intentions:MCII)という手法が、統合失調症患者の運動増進に有用なのかを評価するため、パイロット無作為化比較試験を実施した。その結果、MCII法は、自主性重視の環境でも患者の“運動する”という意図した行動の実現に役立つことが認められた。BMC Psychiatry誌オンライン版2015年9月3日号の掲載報告。 本研究は、統合失調症スペクトラム障害患者の治療を専門に行う2施設の中の3つの専門病棟(高度に構造化された治療プログラムを行う病棟が1つ、自主性や自己決定を重視した治療プログラムを行う病棟が2つ)において行われた。対象は、統合失調症スペクトラム障害群と診断された入院患者36例[平均年齢30.89(標準偏差11.41)歳、うち女性11例]で、MCII群と対照群の2群に無作為化された。対照群は、身体活動に関する参考テキストを読んだ後、ジョギングプログラムに参加するために目標を決め書き留めた。MCII群は、対照群と同じ参考テキストを読んだ後、MCII法を実行した。試験期間は4週間であった。 主な結果は以下のとおり。 ・自主性重視環境の場合、対照群と比較してMCII群において、グループで行うジョギングプログラムへの参加や持続性が増加したが、高度構造化環境の場合は2群間に差は認められなかった(おそらく天井効果による)。 ・これらの結果は、試験開始前のベックうつ病調査票(BDI)スコア、国際標準身体活動質問票(IPAQ)スコア、体重(BMI)、年齢および教育に関する両群の差を調整した場合でも、変わらなかった。 ・試験期間中、ジョギングプログラムへの取り組みに関するスコアやジョギングプログラム以外の身体活動(IPAQスコア)は安定していたのに対し、うつ(BDIスコア)や陰性症状(PANSSスコア)は減少した。 ・MCII群の間で試験前後の変化は認められなかった。 関連医療ニュース 統合失調症への集団精神療法、効果はどの程度か 認知症への運動療法、効果はあるのか うつ病治療、行動療法の意義はどの程度か:京都大学 担当者へのご意見箱はこちら (ケアネット) 原著論文はこちら Sailer P, et al. BMC Psychiatry. 2015;15:211. 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 2週間のジョギングなどが冷え性と睡眠の質を改善/山口県立大学 医療一般 日本発エビデンス(2023/11/27) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 肥満手術、SADI-SはRYGBを凌駕するか/Lancet(2025/09/09) 9月20日・21日、産業保健の最新動向を学ぶ!日本産業保健法学会【ご案内】(2025/09/09) 心房細動と動脈硬化、MRIで異なる脳血管病変示す/ESC2025(2025/09/09) うつ病治療において有酸素運動と組み合わせるべき最適な治療は(2025/09/09) DPP-4阻害薬でコントロール不十分な2型糖尿病にイメグリミン追加が有効~FAMILIAR試験(2025/09/09) 高齢者への不適切処方で全死亡リスク1.3倍、処方漏れで1.8倍(2025/09/09) オメガ3脂肪酸が小児の近視抑制に有効?(2025/09/09) 厳格な血圧コントロールは心臓の健康だけでなく費用対効果も改善(2025/09/09) [ あわせて読みたい ] ASCO2025 まとめ(2025/06/02) 医療・介護施設従事者のための転倒・転落事故へのアプローチ ~転倒・転落事故のメカニズム、予防、事故後フォローのすべて~(2025/02/27) 非機器的早期運動療法はDVT発生率を低減【論文から学ぶ看護の新常識】第1回(2025/02/05) トレンド・トーク『肺がん』(2024/06/11) 災害対策まとめページ(2024/02/05) Dr.大塚の人生相談(2024/02/26) IBD(炎症性腸疾患)特集(2023/09/01) 旬をグルメしながらCVIT誌のインパクトファクター獲得を祝福する【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第63回(2023/08/29) エキスパートが教える痛み診療のコツ(2018/10/11) 医療者向け『学校がん教育.com』(2022/12/01)