うつ病治療、行動療法の意義はどの程度か:京都大学

提供元:ケアネット

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公開日:2013/10/29

 

 うつ病に対する行動療法とその他の心理療法の有効性は同程度(低~中の質のエビデンス)であることが明らかにされた。京都大学大学院医学研究科社会医学系専攻健康増進・行動学分野の篠原 清美氏らが25件の試験をレビューし報告した。行動療法は現在うつ病治療に臨床活用されている心理療法の1カテゴリーである。しかし、他の心理療法と比較した行動療法の有効性および受容性は不明なままであった。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2013年10月号の掲載報告。

 研究グループは本レビューにおいて、急性うつ病に対する、(1)全行動療法アプローチとその他の全心理療法アプローチとの有効性を比較すること、(2)行動療法アプローチ別(行動療法、行動活性化療法、生活技能訓練、リラクゼーショントレーニング)に、その他の全心理療法アプローチとの有効性を比較すること、(3)心理療法アプローチ別(認知行動療法[CBT]、third wave CBT、精神力動的療法、人間主義的療法、統合心理療法)に、全行動療法アプローチとの有効性を比較した。Cochrane Depression Anxiety and Neurosis Group Trials Specialised Register(2013年7月31日時点)を検索し、関連無作為化試験をCochrane Library(全発行年)、EMBASE(1974~)、MEDLINE(1950~)、PsycINFO(1967~)から組み込んだ。また、CINAHL(2010年5月)、PSYNDEX(2010年6月)、さらに参照文献リストの試験や関連する発表・未発表の試験のレビューも組み込み、成人の急性期うつ病において行動療法とその他心理介入法を比較した無作為化対照試験を検索した。

 主な結果は以下のとおり。

・レビューに組み込まれたのは25試験(行動療法とその他心理療法5つのうち1つ以上と比較)、被験者合計955例であった。
・大部分の試験はサンプルサイズが小さく、バイアスリスクが不明もしくは高いにもかかかわらず評価が行われていた。
・行動療法の寛解率は、その他の全心理療法と比較して有意差はなかった(18試験、690例、リスク比[RR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.86~1.09)。受容性も有意差はみられなかった(15試験、495例、全脱落のRR:1.02、95%CI:0.65~1.61)。
・個別に心理療法と比較しても同様で、認知行動療法が行動療法よりも寛解率が優れるというエビデンスは低く(15試験、544例、RR:0.93、95%CI:0.83~1.05)、一方で行動療法が精神力動的療法よりも寛解率が優れるというエビデンスは低かった(2試験、110例、RR:1.24、95%CI:0.84~1.82)。
・統合心理療法と人間主義的療法との比較は1試験のみで、解析では行動療法との間に有意差は示されていなかった。
・以上のように、行動療法とその他心理療法の有効性は同程度であるという低~中のエビデンスがみつかった。行動療法の相対的な有益性と有害性を評価する現状のエビデンスベースは非常に弱いものであった。
・本検討の治療に対する反応と中止に関連したキーアウトカムに関して、効果サイズと精度はいずれも信頼に限りがある。試験参加者が大規模で、試験デザインと治療に対する精度が改善されれば、本レビューにおけるエビデンスの質は改善されるだろう。

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(ケアネット)