根絶戦略の成果は?日本のH.pylori除菌率10年推移

提供元:ケアネット

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公開日:2014/01/27

 

 ファーストラインとして施行されたアモキシシリンとクラリスロマイシンの併用療法によるヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)の年間累積除菌率は65.3%で、徐々にではあるが、10年にわたり除菌率は有意に低下したことが、順天堂大学の佐々木 仁氏らによる研究で明らかになった。また、セカンドラインとして施行されたアモキシシリンとメトロニダゾールの併用療法の年間累積H.pylori除菌率は84.0%で、年ごとの除菌率に変化は認めなかった。著者は、「ファーストラインの除菌率は徐々に低下したものの、“日本の根絶戦略”は十分H.pylori除菌に貢献した」と結論づけた。Digestion誌オンライン版2013年12月12日号の報告。

 日本では、H.pyloriの体系的な根絶戦略が構築されており、ファーストラインとして、プロトンポンプ阻害薬(PPI)のアモキシシリンとクラリスロマイシンの併用療法、セカンドラインとして、アモキシシリンとメトロニダゾールの併用療法が施行されている。しかし、H.pyloriの累積除菌率は、いまだ報告されていない。
そのため、本研究では“日本のH.pylori撲滅戦略”の有効性を検証するために、年間および累積除菌率を調査した。

 2000~2009年に、ファーストラインとしてアモキシシリンとクラリスロマイシンの併用療法を受けた患者(必要に応じてセカンドラインのアモキシシリンとメトロニダゾールの併用療法を施行)をレトロスペクティブに分析し、年間累積除菌率を算出した。データは、intention–to-treat(ITT)解析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・ファーストラインとしてアモキシシリンとクラリスロマイシンの併用療法を施行されたのは、1,973例[男性1,162例、女性811例;平均55.8歳(15~87歳)]であった。
・セカンドラインとしてアモキシシリンとメトロニダゾールの併用療法を施行されたのは、250例であった。
・アモキシシリンとクラリスロマイシンの併用療法による除菌率は65.3%で、徐々にではあるが、10年にわたり除菌率は有意に低下していた(p<0.05)。
・アモキシシリンとメトロニダゾールの併用療法による除菌率は84.0%で、年ごとの除菌率に変化は認めなかった。
・ITT解析による累積除菌率は76.0%、per protocol解析による累積除菌率は98.4%であり、有効性を損なうことなく、毎年一定の除菌率を保っていた。

(ケアネット 武田 真貴子)