災害廃棄物を抱える自治体に朗報:慈恵医大、焼却飛灰からの放射性セシウム除去技術を開発

提供元:ケアネット

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公開日:2012/10/05

 

 東京慈恵会医科大学(研究代表者 並木禎尚氏;臨床医学研究所 講師)は9月24日、DOWAホールディングス株式会社と子会社のDOWAエコシステム株式会社および、DOWAエレクトロニクス株式会社との共同研究において、焼却飛灰から水溶性の放射性セシウムを除去する材料およびプロセス(以下「本技術」)を開発したと発表した。

 これにより、東日本大震災以降各自治体が一時保管している、セシウム含量が規定値を超えた飛灰を埋め立て処理できる可能性が広がるという。

 生活ゴミを焼却すると、燃やした後に残る「主灰」と、排ガスに含まれるダストを集塵機で集めた「飛灰」の2つが発生する。特に飛灰は、主灰以上に放射性セシウムが濃縮されやすい。

 環境省が関係都県廃棄物行政主管部(局)宛に出した事務連絡(平成23年6月28日)の中では、「8,000Bq/kgを超える主灰又は飛灰については、一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)に場所を定めて、一時保管する」とされている。また、一時保管の方法は、「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」(平成23年6月23日)に準拠(*1)するよう求めている。

 本技術の実証実験では、灰に含まれる放射性セシウム濃度を3,800Bq/kg から1,500Bq/kgへ低減させることに成功したという。

 また、本技術では、磁性粒子の表面をフェロシアン化物で被覆した「磁性除染剤」を、水と混合した焼却飛灰に加えて、水に溶け出したセシウムを除染剤に捕集させた後、磁力を用いてセシウムを吸着した除染剤のみを回収することができる。1tの灰を処理した場合、セシウムを吸着した除染剤はわずか1kgのため、ほぼ全ての灰を埋立可能な状態にすることができる計算になる。

 並木氏は昨年「水溶性薬剤の局所送達を磁力で制御できるがん治療用ドラッグデリバリーシステム」を開発した。イノベーションジャパン2011で発表した「磁性セシウム除去剤」はこの理論を応用したもの。

 今回は、DOWAテクノファンドからの助成や、DOWOエレクトロニクスとDOWOエコシステムとの共同開発により、固液分離と固々分離の双方への対応や、除染剤に飛灰が強く結合する問題の解決、短時間の処理で飛灰の放射線量を埋め立て可能なレベルにまで低減させる技術の確立を図ることができた。

 また、並木氏はこの他にも「ストロンチウムとセシウムを同時に除去できる磁性ナノ粒子」の開発にも成功。特許出願済みだという。

 今後は、これらの技術を放射性物質の除染に活用されるよう、各自治体に呼びかけていく予定とのこと。

(*1) 「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」に定める一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)での一時保管の基準

1)埋め立て場所を他の廃棄物と分け、埋め立て場所を記録する。
2)土壌(ベントナイト等)で 30cm 程度の隔離層を設けたうえで、耐水性材料で梱包等した飛灰を置く。
3)雨水浸入防止のための遮水シート等で覆う、あるいはテントや屋根等で被覆する。
4)即日覆土を行う。

(ケアネット 戸田敏治)