今後も評価の価値あり…転移性乳がんのマルチチロシンキナーゼ阻害薬TSU-68

提供元:ケアネット

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公開日:2012/07/25

 

TSU-68はVEGFR-2、血小板由来増殖因子受容体と線維芽細胞成長因子受容体を阻害する新たなマルチキナーゼ阻害薬である。東海大学のSuzuki氏らは、アントラサイクリンレジメン+タキサンによる術前治療にも関わらず進行した転移性乳がん患者におけるTSU-68単剤療法の有効性と安全性を評価する臨床第II相試験を実施し、その結果をInternational Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2012年5月15日号に報告した。

TSU-68は、20名の患者に400mgを1日2回投与された。一次エンドポイントは、RECISTガイドラインver.1.0による奏効率。二次エンドポイントは、TSU-68の臨床的利益率(24週以上持続するCR、PR、SD)、1サイクル終了時における腫瘍細胞の血管新生に関連するバイオマーカーのmRNAレベルの変化の探索、安全性評価であった。

その結果、包括的奏効はみられなかったものの、TSU-68単独療法の臨床的利益は5%の患者に認められた。また、バイオマーカーであるCD-31、Fit-1、Flk/KDRのmRNAレベルは、腫瘍組織を採取した4例すべてで減少傾向を示した。しかしながら、サンプルサイズが小さかったため、有意差は認められなかった。
一方、最も多い有害事象は腫瘍痛(60%)であった。血液系の有害事象はまれであり、軽度であった。Grade2の発疹が1例みられたが、VEGFR阻害薬でみられる高血圧は発現しなかった。Grade4の有害事象、試験関連死とも認められなかった。

本試験では、臨床的ベネフィットが得られたのは患者の5%だったものの、TSU-68単剤療法の忍容性は良好であった。また、CD31のmRNAレベル、Flk-1/KDRの減少が4例でみられており、TSU-68の有効性については、今後もさらに評価する価値があると考えられる。

(ケアネット 細田 雅之)