測るべきコレステロールはどっち? ―LDLコレステロールか、総コレステロールか―

提供元:ケアネット

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公開日:2010/04/28

 



日本動脈硬化学会は26日、「LDLコレステロール直接測定法に関する記者会見」において日常臨床でLDLコレステロール値を管理指標とすべきとした上で、LDLコレステロール値は総コレステロールを測定し、Friedewaldの式によって求めるべきで、LDLコレステロール直接測定法は改良の必要があるとの声明を発表した。

Friedewaldの式を使ってみた




Friedewaldの式は、総コレステロール(TC)値、HDLコレステロール(HDL-C)値、トリグリセリド(TG)値の3つの測定値から、LDLコレステロール(LDL-C)値を算出する。

LDL-C=TC - HDL-C - TG/5

ここに2007年8月に健康診断で測定した私のデータがある(2008年度以降は、健康診断で総コレステロール値が測定されなくなった)。TC値205mg/dL、HDL-C値41mg/dL、LDL-C値(直接測定法)139mg/dL、TG値 147mg/dLとあまり誉められた健康状態ではない。Friedewaldの式によってLDL-C値を算出してみると、135mg/dLと直接測定法の値とおおよそ一致している。

時代はTC値からLDL-C値へ




さて、TC値に取って代わったLDL-C値であるが、2007年4月に日本動脈硬化学会が発表した『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年度版』では、脂質管理指標からTC値が外され、LDL-C値による管理が色濃くなった。これ自体は、従来の誤解が是正される方向に導いた。そもそもTC値はLDL-C、HDL-C、VLDL-Cの総和であり、動脈硬化を惹起させるリポ蛋白(LDLなど)と、逆に抑制するリポ蛋白(HDLなど)が含まれている。そのため、TC値よりLDL-C値を動脈硬化の危険因子とする方が科学的に妥当である。2007年の改訂ではこの点が色濃く映った。

同ガイドラインではLDL-C値の算出方法について、本文中および診断基準の表の脚注に、「直接測定法あるいはFriedewaldの式で計算する」との旨が併記されており、「食後やTG値400mg/dL以上の時には直接法を用いてLDL-C値を測定する」としている。

なぜ、学会は直接測定法に「待った」をかけたのか?




直接測定法はわが国で1997年に開発され、98年には診療保険適用となり、現在7つのキットが使用可能である。しかし、これら7つは方法論の違いによりキット間でLDL-C値にバラツキがあり、特に脂質異常症例、TGが高い場合においては「外れ値」を示すことが多い。場合によってはキット間で30mg/dL以上の差が認められるということが明らかになった。一方、脂質異常症例ではLDL-C標準測定法であるBQ法とのバリデーションが許容範囲を超えていることも報告された。Friedewaldの式ではTG値400mg/dL以上の症例では適用できないことから直接測定法が勧められていたが、直接測定法も完全な解決策ではないことが見出された。

臨床現場では直接測定法が主流になっている




それでは臨床現場ではLDL-C値をどのようにして求めているのか?弊社が2008年12月に行ったアンケート調査によると、高LDL-C血症患者を1ヵ月に20名以上診察している医師の79.3%が直接法を用いており、Friedewaldの式による計算法を用いている医師は20.7%にとどまった(ケアネット調べ)。この結果を見る限り、臨床現場では直接測定法が主流になっている。

LDL-C値はTC値を測定し、Friedewaldの式によって求める




学会は次のことを推奨している。
 
・日常臨床の場では、TC値、HDL-C値、TG値を測定し、Friedewaldの式によってLDL-C値を求める。
・食後に来院した患者については、空腹での再診を求める。
・TG異常高値例では、リスク管理の指標としてnon-HDL-C値を参考とする(non-HDL-C=TC-HDL-C)。non-HDL-Cにおける管理目標値は「LDL-C値+30mg/dL」とする。

なお、学会は、直接測定法について、今後、標準化、精度管理・情報公開が必要であると述べている。合わせて、現在、直接測定法が推奨されている「特定健診」については、TC値を測定項目に加えることを強く要望していることを述べた。学会は「特定健診」における直接測定法の導入に関して標準化および情報公開を付帯条件に容認したが、なされないまま特定健診がスタートした。

我々は現在、患者指導支援ツールを開発している。このシステムは患者さんの診療情報をもとに、患者さんに最適な指導ツールを作成できるサービスではある。残念ながら、現在の開発版ではLDL-C値についてFriedewaldの式が適用されていない。今回の発表を受け、Friedewaldの式に適用したものに変更を検討し、TC値、HDL-C値、TG値からFriedewaldの式によってLDL-C値が自動計算できるようになる見通し。

(ケアネット 藤原 健次)